【2026年8月時点】能登地方は令和6年能登半島地震からの復旧途上にあり、施設の営業時間・料金・休業の状況が変わることがあります。お出かけ前に、各施設の公式サイトや電話で最新の状況をご確認ください。
能登半島の農山漁村が育んだ里山里海の文化的景観は、2011年に日本初のFAO世界農業遺産に認定。棚田・塩田・炭焼き・溜池など、自然と共生してきた能登の持続可能な暮らしの知恵が今も息づいています。
石川県・能登半島に広がる「能登の里山里海」は、2011年に国連食糧農業機関(FAO)から日本初の世界農業遺産(GIAHS)に認定されました。棚田や揚げ浜式塩田、溜池群といった美しい農業景観は、何世代にもわたって受け継がれてきた持続可能な暮らしの知恵の結晶です。能登半島の豊かな自然と人々の営みが調和した文化的景観は、訪れる人の心を深く打ちます。
目次
能登の里山里海と世界農業遺産(GIAHS)認定の意義

2011年6月、能登の里山里海は佐渡(新潟県)とともに日本で初めて世界農業遺産に認定されました。世界農業遺産とは、伝統的な農林水産業と、それに関わる文化・景観・生物多様性を一体的に保全する制度です。能登半島では、急峻な地形を活かした棚田農業、日本海の恵みを活用した揚げ浜式製塩、里山の雑木林を利用した炭焼きなど、自然と共生する暮らしが数百年にわたり続いてきました。認定を申請したのは能登4市4町(七尾市・輪島市・珠洲市・羽咋市・志賀町・中能登町・穴水町・能登町)で、2013年6月に宝達志水町が加わり、現在の能登地域GIAHS推進協議会は4市5町で構成されています。半島全体が一つの文化的景観を形成しているといえます。この認定は能登の人々の暮らしそのものが世界的に貴重であることを示しており、地域の誇りと観光資源として大きな意味を持っています。
能登の里山里海を代表する棚田の景観

能登の里山里海を象徴する景観といえば、輪島市の白米千枚田です。日本海に面した約4ヘクタールの急斜面に1,004枚の小さな田が階段状に連なり、令和4年2月に農林水産省の「つなぐ棚田遺産」に選定されたほか、国の名勝にも指定されています。一枚の面積は18平方メートルほど、最小の田は50センチ四方程度で、農業機械が入れないため今も手作業で田植えや稲刈りが行われています。
令和6年能登半島地震と同年9月の奥能登豪雨で棚田は大きく被災し、現在も復旧作業が続いています。耕作管理を担う「白米千枚田愛耕会」による復旧が進み、2026年5月の田植えでは前年の約240枚から倍増した約480枚で作付けが行われました。3年ぶりに再開した棚田オーナー制度の会員ら約90人も、この田植えに参加しています。輪島市観光課・観光協会は白米千枚田を「見学自由」と案内していますが、復旧工事や農作業の状況で立ち入れる範囲は変わります。現地の案内表示に従い、展望は道の駅「千枚田ポケットパーク」側から楽しむのが基本です。
なお、秋から冬にかけて行われていたLEDイルミネーション「あぜのきらめき」は、震災の影響で開催が見合わされています。石川県の観光公式サイトも「令和7年度は開催しておりません」と明記しており、再開時期は公表されていません。訪問前に輪島市観光課・輪島市観光協会の公式サイトでご確認ください。道の駅「千枚田ポケットパーク」の千枚田レストハウスは金・土・日・祝のみの営業(ショップ10:00〜15:00、レストラン11:00〜14:00)で、駐車場は無料・予約不要、一般車51台・観光バス5台・身障者用2台です。
能登の里山里海に息づく揚げ浜式製塩と伝統産業
能登の里山里海を語るうえで欠かせないのが、500年以上の歴史を持つ揚げ浜式製塩です。珠洲市の仁江海岸では、今も江戸時代と変わらない方法で塩づくりが続けられています。海水を砂地の塩田に撒き、太陽と風の力で濃縮する「揚げ浜式」は、日本で唯一能登だけに残る製塩法で、国の重要無形民俗文化財に指定されています。こうして作られた塩はミネラル豊富でまろやかな味わいが特徴で、能登の食文化を支える重要な調味料です。震災以降は生産量が大幅に減っており、「奥能登揚げ浜塩」の購入は1人3個までに制限されています(石川県観光連盟の2025年3月取材時点)。拠点となる「道の駅 すず塩田村」は2025年3月に一部営業を再開し、同年4月1日からは土日祝を含む年中無休で営業しています(3〜11月は9:00〜17:00、12〜2月は9:00〜16:00)。ただし運営会社の告知では利用できるのはロビー(小規模な売店)とお手洗いのみで、塩の総合資料館「揚浜館」は休館が続いています。石川県の観光公式サイトは塩づくり体験を5月〜9月の要予約(2時間コース 大人2,000円・小人1,000円、2日間コース 3,500円)と案内していますが、実施の可否は年・時期で変わるため、必ず事前に電話(0768-87-2040)でご確認ください。また、能登の里山では炭焼きや漆掻きといった山の仕事も受け継がれ、輪島塗の原料となる漆の採取は今も続いています。里海ではいしる・いしりと呼ばれる魚醤づくりが盛んで、イカやイワシを発酵させた調味料は能登料理に欠かせない存在です。これらの伝統産業は能登の里山里海が育んだ持続可能な暮らしの知恵そのものです。
能登の里山里海の溜池群と生物多様性
能登半島には1,800を超える溜池(ため池)が点在し、棚田への農業用水を供給するとともに、貴重な生態系を育んでいます。これらの溜池は里山の谷間に築かれ、トンボやカエル、水生植物など多様な生き物の生息地となっています。能登の里山里海では、人間が手を加えた二次的自然が生物多様性を高めるという、世界的にも注目される仕組みが機能しています。溜池のほとりにはアカトンボが群れ飛び、水田にはメダカやドジョウが泳ぎ、里山の森にはカブトムシやクワガタが棲んでいます。こうした「人と自然が共に暮らす風景」こそが、世界農業遺産に認定された理由の一つです。近年は休耕田の増加や高齢化による担い手不足が課題となっていますが、白米千枚田の棚田オーナー制度(オーナー会員は年会費3万円で「マイ田んぼ」1枚と収穫米5kgなどの特典、トラスト会員は1万5千円)や里山保全活動を通じて、能登の景観と生態系を次世代に引き継ぐ取り組みが進められています。
能登の里山里海の周辺の見どころ
能登の里山里海を満喫するなら、周辺の見どころもあわせて巡りたいところです。ただし奥能登の施設は震災の影響で休業・時短営業が続いているところがあり、訪問前の確認が欠かせません。日本三大朝市の一つ輪島朝市は、朝市通りが震災直後の火災で焼失し再開の見通しは立っていません(輪島市は朝市通り北側での再開を2029〜2030年ごろに見込んでいます)。現在は「出張輪島朝市」がワイプラザ輪島店(輪島市宅田町)で9:00〜13:00・水曜休で開かれており、そこで新鮮な海産物や輪島塗を買い求めることができます。珠洲市方面に足を伸ばせば、奇岩が連なる曽々木海岸や、能登半島最先端の禄剛埼灯台で絶景を堪能できます。歴史に興味がある方は、曹洞宗の大本山總持寺祖院や、奥能登の豪農の館時国家もおすすめですが、上時国家は2023年8月31日で公開を終了し、2024年1月の能登半島地震で主屋が倒壊したため、2026年9月時点で見学はできません。また、真脇遺跡では縄文時代から能登に人が暮らしていた歴史を学ぶことができます。能登の食を楽しむなら能登丼や能登牛、能登ワインもぜひ味わってみてください。
能登の里山里海へのアクセス・観光情報
アクセス
| 電車 | 金沢駅からのと鉄道で七尾・穴水方面へ |
| 飛行機 | のと里山空港から羽田への直行便が1日2往復 |
| 車(金沢駅から輪島市) | のと里山海道(無料)を利用して約2時間(金沢から白米千枚田までは約2時間10分) |
| 車(金沢駅から珠洲市) | 約2時間半 |
| 車(輪島市中心部から白米千枚田) | 約15分 |
揚げ浜式製塩の拠点は珠洲市の「道の駅 すず塩田村」です。塩の購入はでき、タイミングが合えば塩づくりの作業を見学できますが、資料館「揚浜館」は休館中で、体験の実施可否は事前確認が必要です。ただし奥能登の沿岸を走る国道249号は本復旧工事が続いており、片側交互通行や時間帯規制が残る区間があります(2026年8月時点。輪島市門前町〜珠洲市の権限代行区間は令和11年(2029年)春までに本復旧完了予定)。移動時間には余裕を持ち、出発前に石川県の「石川みち情報ネット」で規制区間を確認してください。能登の里山里海は広大なエリアに見どころが点在しているため、レンタカーでの周遊がおすすめです。宿泊は和倉温泉を拠点にすると奥能登方面への観光にも便利ですが、営業を再開している旅館は限られるため早めの予約を。共同浴場「和倉温泉総湯」は通常営業しています。世界農業遺産の里山里海を体感する能登旅は、日本の原風景に出会える貴重な体験となるでしょう。
写真クレジット:
能登の里山里海・白米千枚田の棚田風景 — Totti(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)
白米千枚田の夕焼けと日本海 — MaedaAkihiko(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)
能登の里山里海の棚田と農村景観 — Asturio Cantabrio(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)









