加賀温泉郷の山代・山中・片山津の3温泉地では、温泉文化と融合したアートプロジェクトが展開。温泉旅館のギャラリーや街なかのアートスポット、九谷焼の作陶体験施設が点在し、アートと湯めぐりを組み合わせた旅を楽しめます。

石川県南部に広がる加賀温泉郷は、山代・山中・片山津の三つの温泉地からなる北陸屈指の温泉エリアです。1,300年の歴史を持つこの温泉地が、近年は現代アートの発信地としても注目を集めています。歴史ある温泉街に溶け込むアート作品や、温泉とアートを融合させたユニークな施設など、加賀温泉郷のアートめぐりで心と体の両方をリフレッシュしましょう。

加賀温泉郷のアートシーンと温泉文化の融合

山代温泉の総湯・夜のライトアップ風景
美しくライトアップされた山代温泉の総湯(Photo: 掬茶 / CC BY-SA 4.0)

加賀温泉郷がアートの舞台として脚光を浴びるきっかけとなったのは、山代温泉の「湯の曲輪(ゆのがわ)」再生事業です。ここでは二つの共同浴場が対をなしており、明治時代の総湯を外観も九谷焼タイルの内装も忠実に復元した「古総湯」(入浴料 大人700円)と、建築家・内藤廣の設計による現代的な「総湯」(入浴料 大人500円)が並びます。両方入れる総湯/古総湯共通券は1,000円です(2026年4月1日改定)。また、片山津温泉の「総湯」は、世界的建築家・谷口吉生の設計によるガラス張りの美しい建物で、柴山潟を望む絶景の中で入浴を楽しめます。加賀温泉郷の各温泉地では、伝統工芸と現代アートが自然に共存する独特の文化圏が形成されており、九谷焼山中漆器の伝統工芸と現代アーティストのコラボレーションも盛んに行われています。

山代温泉のアートスポットと見どころ

山代温泉の温泉街と歴史的な建物
風情ある山代温泉の温泉街(Photo: Asturio Cantabrio / CC BY-SA 4.0)

山代温泉は加賀温泉郷のアートめぐりの中心地です。「魯山人寓居跡いろは草庵」は、美食家・芸術家として知られる北大路魯山人が逗留した旧吉野屋旅館を公開したもので、魯山人の書や篆刻作品を間近に見ることができます。入館料は大人560円(高校生以下無料・75歳以上280円)、開館は9時〜17時(入館は16時30分まで)で、水曜休館(祝日は開館)。魯山人が実際に使っていた仕事場が当時の雰囲気のまま保存されています。「はづちを楽堂」は、温泉街の中心にあるコミュニティスペースで、地元アーティストの作品展示やワークショップが定期的に開催されています。温泉街を散策すると、店先や路地裏にさりげなく置かれたアート作品にも出合えます。山代温泉の「湯の曲輪(ゆのがわ)」と呼ばれる総湯を中心とした円形の町並みそのものが、一つの都市デザイン作品といえるでしょう。

山中温泉のアートと渓谷美の見どころ

山中温泉は、鶴仙渓の渓谷美と一体となったアート体験が魅力です。鶴仙渓に架かる三つの橋のうち、「あやとりはし」は華道家・勅使河原宏がデザインしたS字型の紅紫色の橋で、渓谷そのものをアート作品として体験できるランドスケープデザインの傑作です。渓谷沿いの遊歩道を歩けば、自然と人工物が調和した独特の景観を堪能できます。鶴仙渓沿いの「東山ボヌール」は工芸の器で料理を供するカフェ(10時〜16時・木曜定休)で、「山中座」やゆげ街道周辺の店々では山中漆器の現代的な作品や若手工芸作家のアクセサリーを見て買うことができます。渓谷に張り出す「鶴仙渓川床」は春から秋にかけての開設で、2026年は4月1日〜11月30日、9時30分〜16時(11月のみ10時〜15時)。席料は加賀棒茶付きで大人700円、スイーツが付く川床セットは大人1,000円です。

片山津温泉のアート建築と柴山潟の絶景

片山津温泉の最大のアートスポットは、建築家・谷口吉生が設計した「片山津温泉 総湯」です。柴山潟のほとりに建つガラス張りの建物は、水面と空を映し込む美しい外観で、建築そのものがアート作品。1階の浴室は柴山潟の水面を望む「潟の湯」と、木々に囲まれた「森の湯」の二つがあり、男女が毎日入れ替わります。入浴料は大人500円とリーズナブルです。温泉街の芸妓検番「花館」には、柴山潟の湖底土と片山津の源泉で染め上げる「晶子染め」の体験場があります(与謝野晶子が詠んだ歌のうす紫にちなむ泥染め)。ただし2026年8月現在、晶子染め・源泉豆腐づくりとも体験を休止中のため、再開状況は片山津温泉観光協会(0761-74-1123)または花館(0761-74-7778)へお問い合わせください。柴山潟の湖畔には浮御堂があり、夜にはライトアップされて幻想的な雰囲気に包まれます。湖のほぼ中心では高さ70mの大噴水が1日13回(7・8月は15回)吹き上がり、夜はライトアップされた水柱が見られます。片山津温泉は白山の眺望が美しく、自然そのものが壮大なアート作品といえます。

加賀温泉郷アートめぐりの周辺の見どころ

加賀温泉郷のアートめぐりと合わせて訪れたいスポットをご紹介します。那谷寺は奇岩遊仙境と呼ばれる岩山と紅葉の絶景で知られる名刹で、自然が生み出したアートの宝庫です。大聖寺と九谷焼の里では、古九谷から現代九谷までの色絵磁器の芸術に触れられます。金沢の伝統工芸めぐりと組み合わせれば、石川県の工芸とアートを深く体験する旅になります。粟津温泉も加賀温泉郷の近くにあり、北陸最古の湯として知られています。金沢21世紀美術館と合わせて、石川県のアート周遊ルートを楽しむのもおすすめです。

加賀温泉郷アートめぐりのアクセス・おすすめ情報

アクセス

電車(新幹線)金沢駅から加賀温泉駅まで北陸新幹線で約15〜19分(自由席2,640円・つるぎ/はくたか)。かがやきは最速14分だが停車本数が少ない
電車(在来線)金沢駅からIRいしかわ鉄道の普通列車で約46分・880円
バス加賀温泉駅から各温泉地を結ぶ「キャン・バス」で山代・山中・片山津を効率よく巡れる。1日乗車券は大人1,300円、1回乗車券は大人500円(1回券は車内・事務所のみ販売)
北陸自動車道の加賀ICまたは片山津ICから各温泉地まで約10〜20分
駐車場各温泉地に無料の公共駐車場あり
所要時間アートめぐりは各温泉地で2〜3時間程度が目安。三温泉をすべて巡るなら1泊2日の行程がおすすめ

加賀温泉郷へは、JR加賀温泉駅が玄関口です。2024年3月の北陸新幹線敦賀延伸で金沢〜加賀温泉の在来線特急は運行を終了し、この区間はJR北陸本線からIRいしかわ鉄道に移管されました。ベストシーズンは新緑の5月と紅葉の11月で、渓谷の自然美とアートを同時に楽しめます。


写真クレジット:
山代温泉の総湯・夜のライトアップ — 掬茶(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)
山代温泉の温泉街の風景 — Asturio Cantabrio(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)

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わっか北陸編集部
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