石川県加賀市にある加賀温泉郷は、山代温泉山中温泉片山津温泉の3つの名湯からなる北陸屈指の温泉地です。開湯1300年の歴史を持ち、松尾芭蕉も愛した名湯は、それぞれに個性的な魅力を持っています。北陸新幹線「加賀温泉駅」が開業し、東京・大阪からのアクセスも大幅に向上した注目の温泉地です。

山代温泉 — 加賀の文人墨客が愛した湯の街

山代温泉の古総湯の夜景
山代温泉・古総湯の夜景(Photo: 掬茶 / CC BY-SA 4.0)

山代温泉は、約1300年前に行基が発見したと伝わる加賀温泉郷最大の温泉地です。温泉街の中心には古総湯(こそうゆ)総湯の2つの共同浴場があり、古総湯は明治時代の外観を再現した趣深い建物です。ステンドグラスの窓から差し込む光の中で湯に浸かる贅沢は、山代温泉ならではの体験です。

温泉街には九谷焼の窯元や北大路魯山人ゆかりの「いろは草庵」など文化スポットも点在しており、湯上がりの散策も楽しめます。総湯を中心に旅館・商店が囲む「湯の曲輪(ゆのがわ)」と呼ばれる独特の街並みは、山代温泉だけの風情です。

古総湯入浴料:大人500円 / 営業時間:6:00〜22:00(第4水曜定休)
総湯入浴料:大人490円 / 営業時間:6:00〜22:00(第4水曜定休)
泉質ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物泉(美肌・疲労回復)
駐車場湯の曲輪周辺に無料駐車場あり

山中温泉 — 芭蕉が称えた渓谷の名湯

山中温泉・鶴仙渓の渓谷風景と川床
山中温泉・鶴仙渓の渓谷と夏の川床(Photo: Hiroaki Kaneko / CC BY-SA 3.0)

山中温泉は、大聖寺川沿いの渓谷に広がる情緒豊かな温泉地です。松尾芭蕉が「おくのほそ道」の旅で訪れ、「山中や菊は手折らじ湯の匂ひ」と詠んだことでも知られています。芭蕉はこの温泉を有馬・草津と並ぶ「扶桑三名湯」と称え、9日間も滞在したと伝えられています。

温泉街に沿って流れる大聖寺川の渓谷は鶴仙渓と呼ばれ、四季折々の美しい景色が楽しめます。夏には渓谷に川床が設けられ、流れる水音を聞きながらお茶や食事を楽しめます。渓谷に架かるあやとり橋(S字型の歩行者専用橋)は山中温泉のシンボルで、橋の上から望む渓谷美は絶景です。

山中温泉の総湯・菊の湯と山中座の外観
山中温泉・総湯「菊の湯」と山中座(Photo: Namazu-tron / Public domain)

共同浴場「菊の湯」は1300年の歴史を持つ総湯で、男湯・女湯で建物が分かれているのが特徴(男湯は「山中座」と合棟)。地元の人々にも日常的に愛されている、山中温泉の生活文化の核です。

菊の湯(総湯)入浴料:大人500円 / 営業時間:6:30〜22:00(第2・4木曜定休)
泉質カルシウム・ナトリウム−硫酸塩泉(神経痛・筋肉痛・関節炎に効果)
鶴仙渓の見どころあやとり橋・黒谷橋・こおろぎ橋(渓谷散策約30〜40分)
駐車場山中温泉総湯駐車場(無料・約100台)

片山津温泉 — 柴山潟越しに白山を望む湖畔の湯

柴山潟に浮かぶ片山津温泉の浮御堂
片山津温泉・浮御堂(Photo: Kakidai / CC BY-SA 4.0)

片山津温泉は、柴山潟のほとりに広がる温泉地です。湖越しに白山連峰を望む開放的なロケーションが魅力で、夕日に染まる柴山潟の景色は格別の美しさです。柴山潟に浮かぶ浮御堂は片山津温泉のシンボルで、夜にはライトアップされ幻想的な雰囲気を醸し出します。

共同浴場「総湯」は建築家・谷口吉生の設計によるモダンな建物で、ガラス張りの浴室から柴山潟を一望できます。夏は柴山潟で花火大会が開催され、温泉旅館から花火を眺めながら湯につかるという贅沢な体験ができます。

総湯入浴料:大人490円 / 営業時間:6:00〜22:00(第2水曜定休)
泉質ナトリウム・カルシウム−塩化物・硫酸塩泉(冷え性・疲労回復)
花火大会毎年8月(柴山潟湖上花火大会)
駐車場片山津温泉総湯駐車場(無料)

三湯の泉質・特徴比較

温泉泉質主な効能特徴
山代温泉ナトリウム・Ca硫酸塩塩化物泉美肌・疲労回復・神経痛加賀最大・湯の曲輪の街並み
山中温泉Ca・ナトリウム硫酸塩泉神経痛・筋肉痛・関節炎芭蕉ゆかり・鶴仙渓の渓谷美
片山津温泉ナトリウム・Ca塩化物硫酸塩泉冷え性・疲労回復・慢性皮膚炎柴山潟の絶景・谷口吉生設計総湯

加賀温泉郷の日帰り温泉と総湯めぐり

加賀温泉郷の魅力のひとつが総湯(共同浴場)めぐりです。各温泉地の総湯はいずれも入浴料が500円前後とリーズナブルで、気軽に名湯を体験できます。

三湯はいずれも車で10〜15分圏内にあるため、半日で三湯すべての日帰り入浴が可能です。山代の古総湯でステンドグラスの湯、山中の菊の湯で芭蕉の名湯、片山津の総湯でガラス張りの絶景風呂と、それぞれの個性を比べながら巡るのが通の楽しみ方です。

加賀温泉観光局が発行する「湯めぐりパスポート」を利用すれば、三湯の総湯をお得に巡ることができます(各観光案内所で販売)。

加賀の食 — 温泉地で味わう北陸グルメ

加賀温泉郷への旅では、温泉とともに地元のグルメを楽しむことも欠かせません。

加賀料理は金沢の伝統的な料理文化と豊かな食材が融合した独自の食文化です。九谷焼の器に盛られた繊細な料理は、見た目にも美しく、多くの旅館で宿泊者向けに提供されています。

越前がに・加賀の海鮮は冬(11月〜3月)がシーズン。能登・加賀の日本海から水揚げされた新鮮な海産物を、温泉旅館でいただく体験は格別です。旬の時期に訪れるなら、カニ料理付きの宿泊プランが特に人気です。

山中温泉では「山中漆器」の産地として、漆塗りの器を使った料理を提供する店も多くあります。また、加賀棒茶(ほうじ茶の一種)は加賀を代表するお茶で、温泉街の休憩処でほっとひと息つけます。

加賀温泉郷 1泊2日モデルプラン

加賀温泉郷を効率よく楽しむ、おすすめの1泊2日プランを紹介します。

1日目 午後加賀温泉駅着 → 山中温泉へ。鶴仙渓を散策(あやとり橋〜こおろぎ橋)→ 菊の湯で入浴 → 旅館チェックイン・夕食(加賀料理)
2日目 午前旅館で朝食・朝湯 → 山代温泉へ。古総湯入浴・湯の曲輪散策・いろは草庵見学
2日目 午後片山津温泉へ。総湯入浴・浮御堂周辺を散策 → 加賀温泉駅へ(帰途)

時間に余裕があれば、山代温泉周辺の九谷焼窯元での絵付け体験(所要60〜90分)もおすすめです。

季節別の楽しみ方

春(3〜5月)鶴仙渓の新緑と桜。各温泉街で春の祭り・イベントが開催。
夏(6〜8月)鶴仙渓の川床(7〜9月)。片山津の柴山潟花火大会(8月)。
秋(9〜11月)鶴仙渓の紅葉が絶景(10〜11月)。山代温泉の菊まつり。
冬(12〜3月)カニ料理の最盛期。雪見露天風呂。山代・片山津で雪のライトアップ。

加賀温泉郷の歴史と文人たちの足跡

加賀温泉郷は古くから多くの文人墨客に愛されてきました。元禄2年(1689年)には松尾芭蕉が「おくのほそ道」の旅の途中で山中温泉に逗留し、「山中や菊は手折らじ湯の匂い」の句を残しています。芭蕉は山中温泉の湯を「扶桑三名湯のひとつ」と絶賛し、9日間も滞在したと伝えられています。

山代温泉は明治時代に北大路魯山人が逗留し、旅館の看板や食器のデザインを手がけた地としても知られています。魯山人ゆかりの「いろは草庵」は現在も見学でき、芸術と温泉の深い結びつきを感じることができます。このように加賀温泉郷は単なる湯治場ではなく、日本の文化・芸術と深く結びついた歴史ある温泉地です。

加賀温泉郷へのアクセス・基本情報

所在地石川県加賀市(山代・山中・片山津)
電車北陸新幹線「加賀温泉駅」下車(東京から約2時間半・大阪から約1時間半)
バス加賀温泉駅から各温泉地へ加賀周遊バス「Canbus」で10〜20分(1日フリーパス1,200円)
北陸自動車道 加賀ICまたは片山津ICから各5〜15分
泉質各温泉で異なる(上記比較表を参照)
共同浴場山代:古総湯・総湯 / 山中:菊の湯 / 片山津:総湯
ベストシーズン通年(秋の紅葉10〜11月・冬のカニ11〜3月が特に人気)

加賀温泉郷の周辺観光スポット

加賀温泉郷の宿泊予約

カニシーズン(11〜3月)や紅葉時期(10〜11月)は特に予約が取りにくくなります。じゃらん・楽天トラベルで早めの空室確認がおすすめです。


写真クレジット:
古総湯夜景 — 掬茶(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)
鶴仙渓の川床 — Hiroaki Kaneko(Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0)
菊の湯と山中座 — Namazu-tron(Wikimedia Commons / Public domain)
浮御堂 — Kakidai(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)

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わっか北陸編集部
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HOKURIKU TRAVEL GUIDE
石川・富山・福井の北陸3県を専門に取材する観光メディア「わっか北陸」の編集部。地元ライターによる現地取材と最新情報をもとに、旅行者に役立つガイドを発信しています。