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コウノトリの里・越前市 — 野生復帰プロジェクトの歩み
福井県越前市白山地区は、コウノトリの野生復帰に取り組む全国でも数少ない地域のひとつです。かつて日本各地で見られたコウノトリ(学名:Ciconia boyciana)は、環境の変化や農薬の影響により1971年に国内の野生個体が絶滅しました。しかし、兵庫県豊岡市を中心とした野生復帰事業の広がりにより、越前市でも2011年12月に福井県が白山地区で飼育・繁殖事業を開始し、2015年10月の初放鳥を経て、白山地区を中心に野生のコウノトリが定着するようになりました。田んぼの上を悠然と舞うコウノトリの姿は、里山の自然環境が守られている証であり、越前市の大きな誇りとなっています。

越前市白山地区のコウノトリ野生復帰の取り組み
越前市のコウノトリ野生復帰は、白山地区の住民と行政が一体となって進めてきたプロジェクトです。白山地区はもともと水田が広がる典型的な里山環境で、コウノトリが生息するのに適した湿地や水路が残されていました。地域では「コウノトリが住める環境づくり」を合言葉に、農薬や化学肥料を減らした環境保全型農業への転換が進められました。
福井県は2011年12月、白山地区に設けた飼育施設でコウノトリの飼育・繁殖事業を始めました。2014年6月には兵庫県立コウノトリの郷公園から移送された有精卵から3羽(げんきくん・ゆうきくん・ゆめちゃん)が誕生し、翌2015年10月3日に「げんきくん」「ゆめちゃん」が白山地区で放鳥されています。福井県はその後も放鳥を続け、2015年度から2018年度までに計9羽を放鳥しました。野外では2017年3月に白山地区菖蒲谷で51年ぶりの産卵が確認され、2019年5月には安養寺町の人工巣塔で県内55年ぶりの野外ヒナ誕生に至っています(越前市コウノトリ年表・2025年9月9日更新時点)。現在は白山地区の安養寺町・中野町のほか、坂口地区の下中津原町、王子保地区の大塩町でも人工巣塔での繁殖が続いており、田んぼの中の巣塔でコウノトリが子育てする姿を見ることができます。
コウノトリの観察スポットと観察のマナー
越前市白山地区では、コウノトリを自然な状態で観察できる場所がいくつかあります。白山地区の田んぼエリアには人工巣塔が設置されており、繁殖期(3月の産卵から6月の巣立ちまで)にはコウノトリの親鳥がヒナに餌を与える光景を見ることができます。田んぼの畦道や水路でカエルやドジョウを探すコウノトリの姿も頻繁に見られます。
観察の際には、コウノトリを驚かせないためのマナーが大切です。越前市は、巣から150メートル以上の距離をとって観察・撮影するよう呼びかけています。目安は中規模の田んぼで長い方の畦2枚以上、または電柱3本以上の距離です。大きな声を出したり、フラッシュ撮影をしたり、追い回したりすることは禁物で、餌付けもしてはいけません。飛来地は農村地帯なので、私有地や農地に無断で立ち入らず、農道での路上駐車も避けてください。各巣塔の最新の営巣・巣立ち状況は、越前市の野外コウノトリ繁殖状況のページで公開されています。

コウノトリと里山の環境保全 — 生きものと共生する農業
コウノトリの野生復帰が成功した背景には、白山地区の農家による環境保全型農業への転換があります。コウノトリは食物連鎖の頂点に位置する鳥であり、餌となるカエル、ドジョウ、バッタなどの生きものが豊富に生息する環境が不可欠です。そのため、地域では無農薬・減農薬栽培が推進され、冬季にも田んぼに水を張る「冬水田んぼ」の取り組みが広がりました。
冬水田んぼは、冬の間も田んぼに水を張ることで、水生生物の越冬場所を確保し、春の田植え前から豊かな生態系を維持する農法です。これにより田んぼの生きものが増え、コウノトリの餌場としての機能が大幅に向上しました。また、環境にやさしい農法で栽培されたコメは「コウノトリ呼び戻す農法米」としてブランド化され、通常のコメよりも高い価格で販売されています。消費者がこのコメを購入することで、間接的にコウノトリの保全活動を支援する仕組みが生まれています。
越前市のコウノトリと紫式部 — 自然と文化が息づく里
越前市は、コウノトリの里としてだけでなく、紫式部ゆかりの地としても知られる文化の街です。市街地にある紫式部公園から車で20分ほど東へ向かうとコウノトリの生息エリアが広がっており、平安文学の歴史と里山の自然を同時に楽しめるのが越前市の大きな魅力です。また、越前和紙の里として知られる今立地区もすぐ近くにあり、1500年の伝統を持つ紙すき文化の体験も可能です。
越前市は2009年4月に「越前市食と農の創造条例」を施行し、コウノトリをシンボルとした里地里山の保全と、環境調和型農業による生物多様性の再生に取り組んでいます。コウノトリの観察と合わせて、越前の伝統工芸や歴史スポットをめぐる一日プランを組むのもおすすめです。
コウノトリの里・越前市白山地区へのアクセス情報
アクセス・観察の時期
| 電車・車 | ハピラインふくい武生駅から車で約20分 |
| 高速道路 | 北陸自動車道の武生ICから車で約25分 |
| 公共交通 | アクセスは限られているため、レンタカーの利用がおすすめです |
| 観察できる時期 | 年間を通じて可能。子育てが見られる4月〜6月が見どころ |
| ヒナの巣立ち | 6月〜7月頃(2026年は6月に計4羽が巣立ち) |
| コウノトリPR館 | しらやまいこい館内(越前市都辺町36-84)。9時〜17時・入場無料。月曜(祝日の場合は翌日)・祝日の翌日・年末年始休館 |
冬季(11月〜3月)は冬水田んぼにコウノトリが集まる姿が見られ、雪景色の中のコウノトリという幻想的な風景に出会えることもあります。白山地区のしらやまいこい館内には入場無料の「コウノトリPR館」があり、コウノトリの生態や地域の取り組みを知ることができます(駐車場もこちらを利用します)。越前市を訪れたら、ぜひ足を延ばして、日本の里山で復活したコウノトリの姿を見に行ってみてください。
コウノトリの里・越前市のよくある質問
越前市(白山地区)のコウノトリ野生復帰の取り組みとは?
越前市でコウノトリを観察できる場所はどこですか?
観察のマナーとベストシーズンは?
コウノトリPR館の開館時間と入場料は?
「コウノトリ呼び戻す農法」とは?米はどこで買えますか?
写真クレジット:
コウノトリの優雅な姿 — ISAKA Yoji (cory)(Wikimedia Commons / CC BY 2.1 JP)
人工巣塔とコウノトリ — Hashi photo(Wikimedia Commons / CC BY 3.0)















