【2026年8月時点】能登地方は令和6年能登半島地震からの復旧途上にあり、施設の営業時間・料金・休業の状況が変わることがあります。とくに雨の宮古墳群(中能登町)は被災して修復中のため、古墳へ近づくことができません。お出かけ前に、各施設の公式サイトや電話で最新の状況をご確認ください。

石川県には、古墳時代(3世紀後半〜7世紀)に築かれた数多くの古墳が残されています。加賀地方の能美古墳群や能登地方の雨の宮古墳群をはじめ、前方後円墳・前方後方墳・円墳など多様な形状の古墳が点在し、古代の北陸における権力構造や文化交流の姿を今に伝えています。本記事では、石川県内の主要な古墳・古墳群を地域別にまとめ、それぞれの特徴や出土品、アクセス情報をご紹介します。古墳めぐりの観光プランにぜひお役立てください。

石川県の古墳の概要 — 加賀と能登をつなぐ古代の歴史

石川県の古墳は、大きく加賀地方(南部)と能登地方(北部)に分布しています。加賀地方では能美市を中心に大規模な古墳群が形成され、畿内(大和政権)との強い結びつきを示す前方後円墳が多く見られます。一方、能登地方では前方後方墳が多いのが特徴で、日本海を通じた独自の交易ネットワークの存在がうかがえます。

古墳の築造時期は4世紀から7世紀にかけてが中心で、出土品には鉄製武器・工具・装身具・須恵器・埴輪などがあり、被葬者が相当な権力を持つ首長であったことを物語っています。石川県内の主要な古墳は国・県の史跡として保全され、史跡公園や資料館が整備されているところが多い一方、能登側では令和6年能登半島地震の影響で立ち入りできない古墳や休館中の施設があります。訪問前に各自治体の情報を確認してください。

能美古墳群(能美市)— 加賀最大の古墳群と国史跡の前方後円墳

石川県能美市の秋常山古墳の全景と復元された前方後円墳
能美市の秋常山古墳 — 加賀地方最大級の前方後円墳(Photo: クハ419-5 / CC BY-SA 3.0)

能美古墳群は石川県能美市の平野部に点在する、寺井山・和田山・末寺山・秋常山・西山の5つの独立丘陵に築かれた古墳群の総称です。これまでに62基が確認されており、前方後円墳・前方後方墳・円墳・方墳と墳形の各種を網羅しています。

国史跡としては、まず1975(昭和50)年に「和田山・末寺山古墳群」が指定され、1999(平成11)年に「秋常山古墳群」が指定(2001年に追加指定)。2013(平成25)年10月17日に寺井山古墳群・西山古墳群が追加指定され、あわせて名称が「能美古墳群」に変更されました。

秋常山古墳群

能美古墳群の中核をなす秋常山1号墳は、墳長約140mの前方後円墳で、北陸最大級の規模を誇ります。4世紀後半(末頃)の築造と推定され、加賀地方に大きな勢力を持った首長の墓と考えられています。史跡公園として整備されており、墳丘に登って当時の規模を体感できます。

隣接する秋常山2号墳は5世紀半ば頃の方墳で、埋葬施設は粘土槨に木棺を納めたもの。鉄刀・刀子・竪櫛・滑石製臼玉などが出土しています。2号墳では埋葬施設が保存展示されており、発掘調査時の状況を間近に見学できます。

和田山古墳群

和田山丘陵には古墳が集中し、前方後円墳の和田山5号墳(墳長約55m・5世紀半ば)などが確認されています。隣接する末寺山古墳群とあわせて1975(昭和50)年に国史跡に指定され、秋常山古墳群の首長の系譜を引き継ぐ勢力の墓域とみられています。

能美ふるさとミュージアム

能美古墳群の出土品を展示する拠点施設が「能美ふるさとミュージアム」です。古墳の副葬品や模型などを通じて、古墳時代の能美の姿を学べます。開館時間は9:00〜17:00(最終入館16:30)、休館日は毎週月曜と第3火曜(休日の場合は翌日)および年末年始(12月28日〜1月4日)。入館は無料で、テーマ展示室の観覧のみ有料(大学生以上300円、65歳以上・20名以上の団体200円、高校生以下無料)です。能美古墳群を訪れる際は、まずミュージアムで予備知識を得てから古墳を巡るのがおすすめです。

アクセス:JR能美根上駅からタクシー約10分、または北陸自動車道「能美根上スマートIC」から車で約10分。

雨の宮古墳群(中能登町)— 能登最大の前方後方墳と眉丈山の古代王墓

石川県中能登町の雨の宮古墳群2号墳の前方後方墳
中能登町の雨の宮2号墳 — 能登を代表する前方後方墳(Photo: 名古屋太郎 / CC BY-SA 4.0)

雨の宮古墳群は、石川県中能登町の眉丈山(びじょうざん)山頂付近に築かれた、能登地方を代表する古墳群です。36基の古墳で構成され、国指定史跡に指定されています。標高188mの山頂に古墳が築かれた立地は全国的にも珍しく、「天空の古墳群」とも呼ばれます。

【重要】雨の宮古墳群は令和6年能登半島地震で被災し、修復中のため古墳に近づくことができません。復旧の時期は公表されていないため、訪問前に中能登町生涯学習課文化財保護係(0767-74-2735)にご確認ください。

1号墳は墳丘長64mの前方後方墳で、石川県内では最大規模の前方後方墳です。斜面は葺石で覆われた2段築成で、4世紀中頃の築造と推定されています。2号墳は墳丘長約65mの前方後円墳で、1号墳とほぼ同じ規模を持ちます。前方後方墳と前方後円墳が隣り合って築かれているのは全国的にも珍しい事例で、被葬者同士の関係(世代交代や勢力の転換)が議論されています。

古墳群の麓には「雨の宮能登王墓の館」があり、出土品や古墳群の解説展示を見学できます。開館時間は9:00〜17:00(最終入館16:30)、休館日は毎週火曜(国民の休日にあたる場合は翌日)で、12月1日〜3月20日は冬期休館。入館料は大人200円、小人(高校生以下)100円です。古墳群自体は前述のとおり立ち入りできないため、当面は館の展示で古代能登の世界にふれることになります。

アクセス:のと里山海道「上棚矢駄IC」から車で約15分。JR七尾線「良川駅」からタクシー約10分。

柴垣古墳群(羽咋市)— 日本海を望む能登の首長墓

柴垣古墳群は、石川県羽咋市柴垣町の海岸近くに位置する古墳群です。日本海を望む砂丘・丘陵上に築かれた立地が特徴で、このうち親王塚古墳・円山1号墳・観音山古墳の3基が石川県指定史跡(1971年2月10日指定)となっています。

前方後円墳の親王塚古墳は全長35m(後円部径20m、前方部長17m)で、6世紀中葉の築造と推定されています。円山1号墳は周溝内縁での直径21.5mの円墳で、輝石安山岩を用いた箱形石棺(内法全長344cm)をもち、5世紀前半〜中葉の築造。観音山古墳は基底部の直径43mの円墳で、5世紀末葉の築造とされます。

いずれも日本海を望む立地で、古代の首長がこの地を拠点とした理由がうかがえます。周辺には能登国一宮の気多大社や、千里浜なぎさドライブウェイがあり、能登観光と組み合わせた訪問がおすすめです。

アクセス:のと里山海道「柳田IC」から車で約15分。JR羽咋駅からタクシー約15分。

散田金谷古墳(宝達志水町)— 北陸最大級の横穴式石室

散田金谷古墳(さんでんかなやこふん)は、羽咋郡宝達志水町散田に所在する6世紀後半の円墳です。墳丘は長径21m・短径18.5m・高さ4.7mと規模は大きくありませんが、全長約10mに及ぶ横穴式石室を持ち、その規模は北陸地方でも最大級です。1982(昭和57)年に国史跡に指定されています。

石室は普段は施錠されており内部に入ることはできませんが、屋外の電灯板のスイッチを押すと10分間室内照明が点き、外から石室内を観察できます。内部の見学を希望する場合は、宝達志水町埋蔵文化財センター(0767-28-5180)へ事前に問い合わせが必要です。古墳の散策自体は無料。古墳時代後期にもこの地域に強大な権力を持つ首長が存在したことを示す貴重な史跡です。

アクセス:JR七尾線「敷浪駅」から車で約5分。柴垣古墳群とあわせた見学が可能です。

須曽蝦夷穴古墳(七尾市)— 能登島に残る高句麗式横穴墓

須曽蝦夷穴古墳(すそえぞあなこふん)は、七尾市能登島の丘陵上に築かれた古墳で、1981(昭和56)年1月27日に国史跡に指定されています。1辺約25m・高さ4.5mの方墳で、築造は7世紀中葉前後とみられます。高句麗の古墳に通じるドーム状天井の横穴式石室を持つことが最大の特徴で、朝鮮半島との文化的交流を示す貴重な遺跡として注目されています。

南に開口する2基一対の横穴式石室を持つ特異な構造で、安山岩の板石を積み上げた技法と天井部の持ち送り構造は日本では非常に珍しく、高句麗式の系譜を引くとされます。古墳からは須恵器や大刀などが出土しており、能登島を拠点とした海洋交易の中継者としての被葬者像が浮かび上がります。石室内部は自由に見学できますが、出土品を展示していた蝦夷穴歴史センターは休館中です。近くののとじま水族館は2025年3月22日に営業を完全再開しているので、あわせた見学がおすすめです。

アクセス:能登島大橋を渡り車で約20分。のとじま水族館から車で約10分。

河田山古墳群(小松市)— 加賀南部の古墳群と加賀国府ものがたり館

河田山古墳群(こうだやまこふんぐん)は、小松市の丘陵上に分布していた古墳群です。国府台の工業団地造成にともなう1986〜1988年の調査で計62基の古墳が確認され、工事で失われることになった55基が発掘調査されました。古墳時代前期から中期を中心に築かれ、加賀南部の有力層の墓域とみられています。

飛鳥時代には凝灰岩製の精巧な切石積石室をもつ古墳も築かれました。出土品と復元された切石積石室は、国府台の「加賀国府ものがたり館」(旧・河田山古墳群史跡資料館)と隣接する古墳公園で公開されています。同館は開館9:30〜16:30、休館日は水曜と祝日の翌日(いずれも休祝日を除く)・年末年始で、入館無料。周辺には安宅の関跡や那谷寺など、歴史スポットが充実しています。

アクセス:加賀国府ものがたり館へはJR小松駅からタクシー約15分。北陸自動車道「小松IC」から車で約10分。

石川県の古墳めぐりモデルコース

9:00
能美ふるさとミュージアム出土品の展示を通じて、古墳時代の加賀の姿を学ぶ。国史跡・能美古墳群の全体像が把握できる起点(所要約45分)。
10:00
秋常山古墳群能美市を代表する前方後円墳(全長約140m)。緑豊かな墳丘を実際に歩いて、古代首長の威容を体感(所要約45分)。
11:00
和田山古墳群能美市の古墳群を巡り、加賀平野に眠る古代王墓を体感。全行程所要約3時間の充実した半日コース(所要約30分)。
9:00
雨の宮能登王墓の館(中能登町)雨の宮古墳群の出土品と解説展示で古代能登を予習。大人200円・小人100円、火曜休、12/1〜3/20は冬期休館(所要約30分)。
9:30
須曽蝦夷穴古墳(七尾市能登島)雨の宮古墳群は震災で被災し修復中のため立ち入りできません。かわりに高句麗式の石室をもつ国史跡へ。石室内部は自由に見学できます(移動含め所要約2時間)。
11:00
柴垣古墳群(羽咋市)・散田金谷古墳(宝達志水町)日本海を望む県指定史跡の古墳群と、北陸最大級の横穴式石室。散田金谷古墳の石室は施錠されており、内部見学は事前問い合わせが必要(所要約50分)。
正午
羽咋市内で昼食能登の海の幸や地元名物料理でエネルギー補給。
14:00
気多大社能登国一宮として2,100年以上の歴史。古代王権との関わりも深い聖地。縁結びの御守りと御朱印もいただける(所要約45分)。

石川県の主要古墳一覧

古墳名所在地墳形規模時期指定
秋常山1号墳能美市前方後円墳墳長約140m4世紀後半国史跡(能美古墳群)
秋常山2号墳能美市方墳東西約32.5m5世紀半ば国史跡(能美古墳群)
和田山5号墳能美市前方後円墳墳長約55m5世紀半ば国史跡(能美古墳群)
雨の宮1号墳中能登町前方後方墳墳丘長64m4世紀中頃国史跡(※現在立入不可)
雨の宮2号墳中能登町前方後円墳墳丘長約65m4世紀国史跡(※現在立入不可)
親王塚古墳(柴垣古墳群)羽咋市前方後円墳全長35m6世紀中葉県指定史跡
観音山古墳(柴垣古墳群)羽咋市円墳基底部径43m5世紀末葉県指定史跡
散田金谷古墳宝達志水町円墳長径21m・短径18.5m6世紀後半国史跡
須曽蝦夷穴古墳七尾市方墳1辺約25m7世紀中葉前後国史跡

石川県の古墳のよくある質問

石川県の古墳の主な見どころとエリアを教えてください。
加賀側の拠点は能美市の国史跡・能美古墳群です。寺井山・和田山・末寺山・秋常山・西山の5つの丘陵に、文化庁の案内では62基が確認されています。中核の秋常山1号墳は墳長約140mの前方後円墳で北陸最大級です。能登側の代表は中能登町の国史跡・雨の宮古墳群(36基。1号墳は墳丘長64mの前方後方墳、2号墳は墳丘長約65mの前方後円墳)ですが、令和6年能登半島地震で被災し、古墳へは近づけません。ほか羽咋市の柴垣古墳群(県指定史跡)、宝達志水町の散田金谷古墳(国史跡)、七尾市能登島の須曽蝦夷穴古墳(国史跡)があります。
能美古墳群の見学方法とアクセスを教えてください。
出土品の拠点は能美ふるさとミュージアム(能美市寺井町を1-1)です。開館9:00〜17:00(最終入館16:30)、休館は毎週月曜と第3火曜(休日の場合は翌日)および年末年始(12月28日〜1月4日)。入館は無料で、テーマ展示室のみ大学生以上300円(65歳以上・20名以上の団体200円、高校生以下無料)です。秋常山古墳群は史跡公園として公開され、2号墳では埋葬施設の保存展示を見学できます。アクセスはJR能美根上駅からタクシー、または「のみバス」連携ルートで「能美ふるさとミュージアム」下車(約15分)。北陸自動車道「能美根上スマートIC」から車で約15分です。加賀温泉駅や加賀ICではありません。
雨の宮古墳群は今見学できますか?特徴は?
雨の宮古墳群は中能登町(羽咋市ではありません)の眉丈山山頂付近にある国史跡です。1号墳は県内最大規模の前方後方墳(墳丘長64m)、2号墳は向かい合う前方後円墳(墳丘長約65m)です。中能登町公式によると、令和6年能登半島地震で被災し修復中のため古墳へ近づくことはできません(復旧時期は未定)。麓の雨の宮能登王墓の館は開館しており、出土品と被災した古墳の写真を展示しています。開館9:00〜17:00(最終入館16:30)、毎週火曜休(国民の休日の場合は翌日)、12月1日〜3月20日は冬期休館。入館料は大人200円、小人(高校生以下)100円です。訪問前に中能登町生涯学習課文化財保護係へご確認ください。
柴垣古墳群はどこにあり、何が見られますか?
柴垣古墳群は羽咋市柴垣町(志賀町ではありません)の海岸近くにあります。このうち親王塚古墳(前方後円墳・全長35m・6世紀中葉)、円山1号墳(円墳)、観音山古墳(円墳・基底部径43m)の3基が石川県指定史跡です。日本海を望む立地で、能登国一宮の気多大社や千里浜なぎさドライブウェイと組み合わせて訪れやすい場所です。
散田金谷古墳と須曽蝦夷穴古墳は見学できますか?
散田金谷古墳(宝達志水町・国史跡)は6世紀後半の円墳で、北陸最大級の横穴式石室(全長約10m)があります。石室は施錠されており中には入れませんが、屋外の電灯板のスイッチを押すと10分間照明が点きます。内部見学は宝達志水町埋蔵文化財センター(0767-28-5180)へ事前に問い合わせてください。古墳の散策自体は無料です。須曽蝦夷穴古墳(七尾市能登島・国史跡)は7世紀中葉前後の方墳で、高句麗系のドーム状天井の横穴式石室を持ち、古墳は自由に見学できます。隣接の蝦夷穴歴史センターは2026年4月時点で臨時休館(団体・学術調査のみ事前申込)です。

写真クレジット:
秋常山古墳の全景 — クハ419-5(Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0)
雨の宮2号墳 — 名古屋太郎(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)

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わっか北陸編集部
HOKURIKU TRAVEL GUIDE
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