加賀市の観光ガイド|加賀温泉郷・鶴仙渓・九谷焼の里と北前船の歴史を巡る旅
石川県の南西部に位置する加賀市は、加賀温泉郷として知られる山代・山中・片山津の三つの名湯をはじめ、渓谷美に富む鶴仙渓、九谷焼発祥の地・大聖寺、北前船の繁栄を伝える橋立など、見どころが凝縮されたエリアです。古くから文人墨客に愛された温泉地の情緒、白山の恵みが生んだ自然美、加賀百万石の文化が育んだ伝統工芸——訪れるたびに新たな魅力に出会える加賀市の観光スポットを、テーマ別にご紹介します。2024年春に北陸新幹線の加賀温泉駅が開業し、東京からのアクセスも格段に便利になりました。温泉と自然、歴史と文化が織りなす加賀の旅へ出かけましょう。

目次
加賀市の観光スポット — 加賀温泉郷の三つの名湯
加賀市を代表する観光資源といえば、やはり加賀温泉郷の三名湯です。それぞれ異なる個性を持つ山代温泉・山中温泉・片山津温泉は、いずれも開湯1,300年以上の歴史を誇ります。近隣の小松市にある粟津温泉と合わせて四湯めぐりを楽しむこともできます。
山代温泉 — 古総湯と北大路魯山人ゆかりの地
山代温泉は、行基が霊鳥に導かれて発見したと伝わる開湯1,300年の名湯です。温泉街の中心にある「古総湯」は、明治時代の共同浴場を忠実に復元した建物で、ステンドグラスの窓や九谷焼のタイルが美しく、洗い場のない昔ながらの「入湯のみ」のスタイルで温泉を楽しめます。古総湯を囲む「湯の曲輪(がわ)」と呼ばれる広場は、温泉地ならではの風情が漂う散策スポットです。
山代温泉は、美食家・芸術家として知られる北大路魯山人が若き日に逗留した地としても有名です。魯山人が滞在した旅館の部屋は「魯山人寓居跡 いろは草庵」として公開されており、刻字看板や書などの作品を間近に鑑賞できます。温泉街を歩けば、九谷焼のギャラリーや和菓子店が点在し、加賀の伝統文化に触れることができるでしょう。
山中温泉 — 芭蕉が愛した「扶桑三名湯」とこおろぎ橋

山中温泉は、松尾芭蕉が「奥の細道」の旅で9日間も逗留し、有馬・草津と並ぶ「扶桑三名湯」と称えた温泉地です。大聖寺川の渓流沿いに温泉街が広がり、四季折々の渓谷美を堪能できます。温泉街のシンボル「こおろぎ橋」は総ひのき造りの橋で、紅葉の季節には橋と渓谷が一体となった絶景が見られます。
共同浴場「菊の湯」は、男湯と女湯が別棟になった珍しい造りで、山中温泉の泉質を気軽に楽しめるスポットです。女湯の建物は「山中座」と呼ばれる芸能ホールを兼ねており、加賀の伝統芸能加賀宝生や山中節の上演が行われることもあります。ゆげ街道と呼ばれるメインストリートには山中漆器の工房やカフェが並び、温泉情緒とともに伝統工芸の世界を満喫できます。
片山津温泉 — 柴山潟に映る白山の絶景と浮御堂
片山津温泉は、柴山潟のほとりに広がる温泉地です。天気の良い日には湖面越しに白山連峰を望む雄大な景観が広がり、夕暮れ時には水面が茜色に染まる幻想的な風景が楽しめます。湖に浮かぶ「浮御堂」は片山津温泉のシンボルで、湖上から眺める360度の絶景パノラマは圧巻です。
2012年にオープンした「片山津温泉 総湯」は、建築家・谷口吉生が設計したガラス張りの近代的な建物で、湖に面した開放感あふれる浴場から柴山潟を一望できます。4月から10月の夜には柴山潟で花火が打ち上げられ、湖面に映る花火の光景は片山津温泉ならではの風物詩となっています。
加賀市の観光スポット — 自然と景勝地
加賀市には温泉だけでなく、渓谷や海岸線など変化に富んだ自然の絶景が広がっています。白山の伏流水が刻んだ渓谷美や、日本海の荒波が彫り上げた断崖など、山と海の両方の景勝地を楽しめるのが加賀市の魅力です。
鶴仙渓 — 山中温泉の渓谷美と三つの橋めぐり
鶴仙渓は、大聖寺川の上流に約1.3キロメートルにわたって続く渓谷で、山中温泉を代表する景勝地です。遊歩道沿いには「こおろぎ橋」「あやとりはし」「黒谷橋」の三つの個性的な橋が架かり、それぞれ異なる渓谷の表情を楽しめます。
特に「あやとりはし」は、華道家・勅使河原宏がデザインしたS字型の紫色の橋で、渓谷の緑との鮮やかなコントラストが印象的です。春は新緑、夏は深い緑と清流の涼、秋は燃えるような紅葉、冬は雪化粧と、四季それぞれに趣があります。4月から11月の期間には川床が設けられ、渓谷を眺めながら加賀棒茶や道場六三郎レシピの川床ロールを味わうことができます。散策の所要時間は約30分から1時間で、温泉の前後に気軽に歩ける絶好の散歩道です。
加佐の岬 — 加賀海岸の断崖絶景とパワースポット
加佐の岬は、加賀海岸で最も日本海に突き出した岬で、切り立った断崖から眼下に広がる日本海のパノラマが圧巻の景勝地です。岬の先端には遊歩道が整備されており、左右に荒々しい岩礁と紺碧の海を見下ろしながら散策できます。晴れた日には白山連峰も望め、海と山の大パノラマを堪能できるでしょう。
岬周辺はパワースポットとしても知られ、縁結びの御利益があるとされています。駐車場から岬の先端まで徒歩約10分と手軽にアクセスでき、片山津温泉から車で約15分の距離にあるため、温泉とセットで訪れるのがおすすめです。
加賀市の観光スポット — 歴史と文化
加賀市は江戸時代に加賀藩の支藩・大聖寺藩が置かれた歴史の街でもあります。十万石の城下町が育んだ九谷焼の文化、北前船交易で巨富を築いた橋立の船主集落、そして白山信仰の古刹・那谷寺など、歴史好きにはたまらないスポットが点在しています。
大聖寺と九谷焼の里 — 加賀藩支藩十万石の城下町
大聖寺は、加賀藩三代藩主・前田利治が入封して以来、明治維新まで十万石の城下町として栄えた街です。大聖寺川沿いには武家屋敷跡や寺院が並び、往時の風情が今も感じられます。「石川県九谷焼美術館」では、古九谷から現代九谷まで、華やかな色絵磁器の歴史を体系的に学ぶことができます。
九谷焼は1655年に大聖寺藩の藩祖・前田利治が領内の九谷村で窯を開いたのが始まりとされ、青(緑)・黄・紫・紺青・赤の「五彩」と呼ばれる鮮やかな上絵付けが特徴です。大聖寺周辺には窯元やギャラリーが点在し、お気に入りの器を探す街歩きが楽しめます。加賀のお土産としても九谷焼は大変人気があります。
加賀橋立の北前船集落 — 日本一の富豪村
加賀・橋立は、江戸後期から明治初期にかけて北前船交易で莫大な富を築いた船主たちの集落で、「日本一の富豪村」と呼ばれた歴史を持ちます。国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、赤瓦と笏谷石(しゃくだにいし)の塀が続く独特の町並みは、加賀市でしか見られない貴重な景観です。
「北前船の里資料館」では、船主・酒谷家の屋敷を公開しており、豪壮な建築と北前船に関する資料を見学できます。船箪笥や航海道具、交易品など、当時の海運がもたらした豊かさを物語る品々は見応えがあります。橋立漁港では新鮮な海の幸が水揚げされ、冬には香箱蟹を目当てに多くの食通が訪れます。
那谷寺 — 芭蕉が詠んだ奇岩と紅葉の名刹
那谷寺は、養老元年(717年)に泰澄大師が開創した真言宗の古刹で、白山信仰の拠点として1,300年以上の歴史を持ちます。境内に広がる「奇岩遊仙境」は、長い年月をかけて浸食された凝灰岩の奇岩群で、洞窟や岩山が織りなす幽玄な風景は訪れる人を圧倒します。
松尾芭蕉は奥の細道の途中にこの地を訪れ、「石山の 石より白し 秋の風」という名句を詠みました。秋の紅葉は特に美しく、奇岩と赤く染まった紅葉のコントラストは北陸屈指の絶景として知られています。重要文化財に指定された本殿や三重塔、護摩堂などの堂宇群も見どころで、建築好きにも必見のスポットです。御朱印は本堂受付でいただくことができ、白山信仰にちなんだ御利益を求めて参拝する方も多くいます。駐車場は境内入口前に完備されています。
加賀市の観光スポット — 伝統工芸体験
加賀市は九谷焼と山中漆器という二つの国指定伝統的工芸品の産地でもあります。見るだけでなく、実際に手を動かして伝統工芸を体験できる施設が充実しているのも、加賀市観光の大きな魅力です。
九谷焼の絵付け体験 — 五彩の世界を自分の手で
九谷焼の里・大聖寺エリアには、絵付け体験ができる窯元や工房が複数あります。「九谷焼体験ギャラリーCoCo」や「九谷セラミック・ラボラトリー(CERABO KUTANI)」では、素焼きの器に五彩の絵の具で自由に絵付けを施す体験が人気です。所要時間は約1時間から1時間半で、完成品は後日焼成して郵送してもらえます。
九谷セラミック・ラボラトリーは2019年にオープンした複合施設で、九谷焼の製造工程を見学できるギャラリーや、地元作家の作品を購入できるショップも併設されています。世界に一つだけの九谷焼を作る体験は、加賀旅行の思い出として格別です。加賀の郷土玩具である八幡起き上がりへの絵付け体験も楽しめます。
山中漆器 — ろくろ挽きの技と拭き漆体験
山中漆器は、安土桃山時代に木地師たちが山中の地に移り住んだのが始まりとされ、「木地の山中」と呼ばれるほど、ろくろ挽きの技術に定評があります。山中温泉の「うるしの器 あさだ」や「我谷盆 芦谷」などでは、拭き漆(ふきうるし)体験が可能で、木の器に漆を塗り重ねる伝統の技を実際に体験できます。
「山中うるし座(山中漆器伝統産業会館)」では、山中漆器の歴史や製作工程を学べるほか、蒔絵体験も行っています。温泉街のゆげ街道を散策しながら漆器の工房やショップを巡り、普段使いにぴったりの椀や箸を見つけるのも山中温泉ならではの楽しみ方です。
加賀市のグルメ — 加賀の食文化を味わう
加賀市の旅の楽しみは、温泉や観光だけではありません。日本海の海の幸と白山の山の幸に恵まれた加賀市は、石川県屈指のグルメエリアでもあります。
加賀料理は、加賀百万石の藩政時代に武家文化のもとで発展した格式高い料理で、治部煮(じぶに)やかぶら寿司、鯛の唐蒸しなどが代表的です。加賀温泉郷の旅館では、こうした伝統的な加賀料理を温泉とともに堪能できます。冬の味覚として外せないのが香箱蟹で、メスのズワイガニならではの内子と外子の濃厚な旨みは格別です。橋立漁港や地元の料理店で新鮮な香箱蟹を味わうことができます。
加賀野菜は金沢市が主な産地ですが、加賀市の料理店でも地元の食材として取り入れられています。加賀太きゅうりや金時草など、季節ごとの伝統野菜を使った料理は旅の食卓を彩ります。また、白山麓の清流が育む加賀の蕎麦も見逃せないグルメのひとつ。在来種のそば粉を使った風味豊かな手打ちそばは、温泉めぐりの合間にぜひ立ち寄りたい一品です。
加賀市のアートスポット — 温泉街で出会う現代アート
加賀温泉郷では、温泉と現代アートを融合させた取り組みが注目を集めています。加賀温泉郷のアートめぐりでは、山代・山中・片山津の各温泉地に点在するアートスポットを巡ることができます。
片山津温泉の総湯に隣接する「片山津温泉アートギャラリー」では、地元にゆかりのある作家の作品を展示。山代温泉では古総湯周辺に現代アート作品が設置されており、温泉街を散策しながらアート鑑賞が楽しめます。山中温泉の「東山ボヌール」は、蔵をリノベーションしたギャラリーカフェとして人気を集めています。
加賀市は九谷焼や山中漆器といった伝統工芸の産地であるがゆえに、工芸と現代アートの境界を越えた作品も生まれています。温泉に浸かりながら、加賀の伝統と現代の美が融合するアートに触れる——そんな贅沢な体験ができるのも、加賀温泉郷ならではの魅力です。
加賀市の観光モデルコース — 1泊2日で巡る加賀温泉郷
加賀市の主要スポットを効率よく巡る1泊2日のモデルコースをご紹介します。
1日目:山代温泉・大聖寺エリア
午前中に加賀温泉駅に到着したら、まずは大聖寺の城下町を散策しましょう。石川県九谷焼美術館で九谷焼の歴史を学び、周辺の窯元で絵付け体験を楽しみます。昼食は大聖寺エリアの蕎麦店で加賀の蕎麦をいただきましょう。午後は那谷寺を参拝し、奇岩遊仙境の幽玄な景観を堪能します。夕方は山代温泉にチェックインし、古総湯で明治時代の湯治場気分を味わってから、旅館で加賀料理の夕食をゆっくり楽しんでください。
2日目:山中温泉・片山津温泉・橋立エリア
2日目の午前中は山中温泉へ移動し、鶴仙渓の遊歩道を散策。こおろぎ橋からあやとりはしまでの渓谷美を楽しんだ後、ゆげ街道で山中漆器のショップを覗きます。昼食後は橋立の北前船集落で歴史ある町並みを散策し、北前船の里資料館を見学。時間に余裕があれば加佐の岬で日本海の絶景を眺めましょう。最後に片山津温泉の総湯で柴山潟を眺めながら旅の疲れを癒やし、加賀のお土産を選んで帰路につきます。
時間に余裕がある方は、加賀の祭りのシーズンに合わせて訪れるのもおすすめです。大聖寺の「お旅まつり」では曳山子供歌舞伎が上演され、加賀の伝統芸能に触れることができます。
加賀市へのアクセス — 北陸新幹線で東京から約2時間半
2024年3月の北陸新幹線延伸により、加賀温泉駅に新幹線が停車するようになりました。東京駅から加賀温泉駅まで最速約2時間半と、首都圏からのアクセスが格段に便利になっています。
電車でのアクセス:東京駅からJR北陸新幹線で加賀温泉駅まで約2時間30分。大阪・京都方面からはJR特急サンダーバードで金沢駅まで行き、北陸新幹線に乗り換えて加賀温泉駅下車(合計約2時間30分〜3時間)。金沢駅からは北陸新幹線で約15分です。
車でのアクセス:北陸自動車道の加賀ICまたは片山津ICが最寄りです。金沢市内から約1時間、福井市内から約40分の距離にあります。各温泉地や観光スポットには駐車場が完備されているため、車での周遊も快適です。
加賀市内の移動:加賀温泉駅を拠点に、CAN BUS(キャンバス)と呼ばれる周遊バスが運行されています。山まわりコースと海まわりコースの2路線があり、主要観光スポットを効率よくめぐることができます。1日フリー乗車券を利用すれば、お得に加賀温泉郷を周遊できるのでおすすめです。
温泉と渓谷の自然美、九谷焼と山中漆器の伝統工芸、北前船がもたらした歴史と文化——加賀市は何度訪れても新しい発見がある、奥深い魅力を持つ街です。北陸新幹線で気軽にアクセスできるようになった加賀温泉郷で、心も体も癒やされる旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。
写真クレジット:
山代温泉の古総湯 — Asturio Cantabrio(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)
白山比咩神社 — bloodnok(Wikimedia Commons / CC BY 2.0)






