越中一宮めぐり — 高瀬神社・射水神社・雄山神社・気多神社と富山の四社巡り
富山県は全国でも珍しく、「越中一宮」を称する神社が4社もある県です。高瀬神社(南砺市)、射水神社(高岡市)、雄山神社(立山町)、気多神社(高岡市)の四社は、いずれも古い歴史と格式を持ち、越中国の信仰の中心として人々に崇敬されてきました。近年は4社すべてを参拝する「越中一宮めぐり」が御朱印巡りの人気コースとなっており、富山の歴史・文化を深く知る旅として注目を集めています。この記事では、越中一宮四社の歴史や御朱印・御利益情報、そしてモデルコースを詳しくご紹介します。
目次
越中一宮とは — 富山の四社の歴史と由来
「一宮(いちのみや)」とは、かつての律令制のもとで各国(令制国)の中で最も社格の高いとされた神社のことです。通常、一つの国に一宮は一社ですが、越中国(現在の富山県)では高瀬神社・射水神社・雄山神社・気多神社の四社がそれぞれ一宮を称しています。これは時代によって一宮の位置づけが変遷したことや、越中国が広大で地域ごとに有力な神社が存在したことが背景にあります。
越中国の総社である越中総社跡は高岡市に所在し、国府も現在の高岡市伏木にあったとされます。奈良時代には大伴家持が越中国守として赴任し、万葉集に越中の風土を詠んだ歌を多く残しました。家持が参拝した神社も越中一宮の中に含まれており、万葉の時代から続く信仰の歴史を感じることができます。
四社はそれぞれ祀る神様も異なり、高瀬神社は大己貴命(大国主命)、射水神社は瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)、雄山神社は伊邪那岐命と天手力雄命、気多神社は大己貴命と奴奈加波比売命を祭神としています。越中一宮めぐりでは、これら四社の異なる御利益を一度に授かることができるのも魅力のひとつです。
高瀬神社 — 南砺市に鎮座する越中一宮の古社
高瀬神社は南砺市高瀬に鎮座する越中一宮のひとつで、延喜式神名帳にも記載される古社です。御祭神は大己貴命(おおなむちのみこと)で、縁結び・農耕・国土開拓の神として信仰されています。境内は杉の大木に囲まれた静寂な空間が広がり、越中随一の格式を感じさせます。
高瀬神社の創建は景行天皇の御代と伝えられ、2000年以上の歴史を持つとされています。本殿は入母屋造で、拝殿とともに荘厳な雰囲気を醸し出しています。境内には「なでうさぎ」の像があり、因幡の白兎の故事にちなんで、撫でると病気平癒や心身の健康に御利益があるとされています。
高瀬神社の御朱印は拝殿横の社務所でいただけます。越中一宮の朱印が押された格式ある御朱印で、一宮めぐりの最初の一社として訪れる参拝者も多いです。毎年6月30日の「夏越の大祓」や正月の初詣には多くの参拝者で賑わいます。また、南砺市のこきりこ祭りで知られる五箇山エリアと合わせて訪れるのもおすすめです。
射水神社 — 高岡古城公園に鎮座する越中一宮

射水神社(いみずじんじゃ)は、高岡古城公園の中に鎮座する越中一宮です。御祭神は瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)で、五穀豊穣・商売繁盛・縁結びの御利益があるとされています。もともとは二上山(ふたがみやま)の麓に鎮座していましたが、明治8年(1875年)に現在の高岡古城公園内に遷座しました。
高岡古城公園は前田利長が築いた高岡城の跡地で、春には桜の名所としても知られる美しい公園です。その中に佇む射水神社は、朱塗りの鳥居と白木造の拝殿が印象的で、緑豊かな公園の景観と調和しています。参拝後は公園内の散策も楽しめるため、観光スポットとしても人気です。近くには国宝瑞龍寺もあり、高岡の歴史文化を堪能できます。
射水神社では結婚式も多く執り行われており、縁結びのパワースポットとしても知られています。御朱印は社務所で受けられ、季節限定の御朱印が頒布されることもあります。毎年秋の例大祭「射水神社築山行事」は高岡の風物詩で、境内に飾られる築山(つきやま)は富山県の無形民俗文化財に指定されています。
雄山神社 — 立山山頂に祀られる越中一宮

雄山神社(おやまじんじゃ)は、霊峰立山を御神体とする越中一宮で、三つの社殿から構成される珍しい神社です。山頂の「峰本社」(標高3,003m)、中腹の芦峅寺にある「中宮祈願殿」、そして岩峅寺にある「前立社壇(まえだてしゃだん)」の三社を合わせて雄山神社と呼びます。御祭神は伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)です。
立山は古くから山岳信仰の聖地として崇められ、「立山・白山・富士山」の日本三霊山のひとつに数えられています。峰本社は立山黒部アルペンルートの室堂から登山で到達する山頂に鎮座しており、夏の登山シーズン(7月〜9月)のみ参拝が可能です。山頂での参拝は、まさに天上の世界に足を踏み入れるような神聖な体験となります。
通年参拝できる前立社壇と中宮祈願殿は、それぞれ里宮としての役割を担っています。前立社壇は富山地方鉄道の岩峅寺駅から徒歩圏内にあり、大きな神門と荘厳な拝殿が印象的です。中宮祈願殿は芦峅寺の集落に位置し、立山信仰の中心地として栄えた歴史を今に伝えています。御朱印は三社それぞれで異なるものをいただくことができ、すべて集めると達成感もひとしおです。
気多神社 — 伏木に佇む越中一宮の静寂の社
気多神社(けたじんじゃ)は高岡市伏木に鎮座する越中一宮で、御祭神は大己貴命(おおなむちのみこと)と奴奈加波比売命(ぬなかわひめのみこと)です。能登の気多大社から勧請されたとされ、越中国府が置かれた伏木の地に古くから鎮座してきました。本殿は室町時代の建築で、国の重要文化財に指定されています。
気多神社の魅力は、観光地化されていない静寂な佇まいにあります。深い森に包まれた境内は訪れる人も少なく、古の越中国府の面影を静かに偲ぶことができます。大伴家持が越中国守として赴任した時代、この地は越中の政治・文化の中心地であり、万葉の歌人たちが歩いた地でもあります。
気多神社の御朱印は社務所が不在の場合もあるため、事前に確認してから訪れることをおすすめします。周辺には越中国分寺跡や勝興寺(国宝)もあり、伏木の歴史散策と合わせて訪れると充実した時間を過ごせます。縁結びの神である奴奈加波比売命を祀ることから、恋愛成就のパワースポットとしても密かに人気があります。
越中一宮めぐりの御朱印と御利益
越中一宮めぐりの大きな楽しみのひとつが、四社それぞれで異なる御朱印を集めることです。各神社の御朱印には「越中一宮」の文字が記され、神社名と御祭神にちなんだ印が押されます。四社すべての御朱印を揃えることで、越中国の一宮を完全に巡拝した記念となります。
御利益も四社それぞれに特色があります。高瀬神社は縁結び・病気平癒、射水神社は五穀豊穣・商売繁盛・縁結び、雄山神社は家内安全・五穀豊穣・厄除開運、気多神社は縁結び・夫婦円満といった御利益が知られています。四社を巡ることで、人生のあらゆる場面での御加護を祈願することができるでしょう。
お守りも各神社で個性豊かなものが頒布されています。高瀬神社の「なでうさぎ守」、射水神社の「結び守」、雄山神社の「立山守」など、その神社ならではのお守りは旅の思い出にもなります。参拝の際には社務所の受付時間を事前に確認しておくと安心です。
越中一宮めぐりのアクセスとモデルコース
越中一宮四社は富山県内に点在しているため、車での移動が効率的です。1日で四社を巡るモデルコースとしては、まず高岡市内の射水神社と気多神社を午前中に参拝し、その後南砺市の高瀬神社へ向かい、最後に立山町の雄山神社前立社壇を訪れるルートがおすすめです。全行程は車で4〜5時間程度を見込んでおくとよいでしょう。
公共交通機関を利用する場合は、2日間に分けて巡るのが現実的です。1日目は高岡駅を起点に射水神社(徒歩約15分)と気多神社(バスまたはタクシー)を巡り、瑞龍寺なども合わせて観光します。2日目はJR城端線で高瀬神社(福光駅からタクシー約10分)を参拝し、その後富山駅経由で富山地方鉄道に乗り換えて岩峅寺駅へ向かい、雄山神社前立社壇を参拝します。
雄山神社の峰本社(山頂)への参拝は夏山シーズン限定となるため、峰本社も含めた完全制覇を目指す場合は7月〜9月に計画する必要があります。立山黒部アルペンルートで室堂まで上がり、雄山山頂まで約2時間の登山となります。登山装備が必要ですので、しっかり準備をして臨みましょう。
越中一宮めぐりの周辺の見どころ
越中一宮めぐりと合わせて訪れたい周辺スポットも豊富です。高岡市では高岡古城公園の散策や国宝瑞龍寺の参拝、高岡大仏の見学など、歴史と文化に触れる観光が楽しめます。南砺市方面ではこきりこ祭りで知られる五箇山の合掌造り集落も世界遺産として必見です。
立山方面では、雄山神社前立社壇の参拝と合わせて立山黒部アルペンルートの観光もおすすめです。称名滝や室堂の雪の大谷など、立山ならではの大自然の絶景を楽しむことができます。越中一宮めぐりは、富山県の歴史・自然・文化を総合的に体験できる贅沢な旅のプランです。四社それぞれの個性ある佇まいと神聖な空気に触れながら、越中の悠久の歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
写真クレジット:
射水神社の拝殿 — ChiefHira(Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0)
雄山神社前立社壇の神門 — Saigen Jiro(Wikimedia Commons / CC0)








