ローカル線の旅④:北鉄石川線 — 金沢の城下町から鶴来の門前町へ、白山麓のローカル線
金沢の中心部から南へ走るローカル線、北陸鉄道石川線(北鉄石川線)。にし茶屋街に近い野町駅から白山麓の門前町・鶴来駅まで、全長13.8km・約30分の短い路線ですが、金沢の城下町文化から白山信仰の聖地へと車窓の風景が移り変わる、奥深い鉄道旅が楽しめます。沿線には住宅街や学園都市が広がり、地元住民の生活の足としても親しまれている石川線の魅力を紹介します。

目次
北鉄石川線の路線概要 — 野町駅から鶴来駅へのローカル線の旅
北陸鉄道石川線は、金沢市の野町駅を起点に白山市の鶴来駅を結ぶ全長13.8kmのローカル線です。途中12の駅があり、全線の所要時間は約30分。運行間隔は日中約30分に1本で、朝夕のラッシュ時にはもう少し増発されます。運賃は野町駅から鶴来駅まで片道500円前後で、1日フリーきっぷなども販売されています。車両は2両編成のワンマン運転で、のどかなローカル線の雰囲気が漂います。
石川線は金沢市の繁華街から白山麓への玄関口を結ぶ路線であり、通勤・通学の足としてだけでなく、観光路線としての魅力も備えています。特に終点の鶴来駅周辺には、全国3,000社を超える白山神社の総本社・白山比咩神社や、歴史ある酒蔵が点在しており、金沢から気軽に足を延ばせる日帰り鉄道旅の目的地として最適です。
野町駅 — にし茶屋街最寄りの北鉄石川線の始発駅
石川線の起点である野町駅は、金沢三茶屋街のひとつ・にし茶屋街の最寄り駅です。金沢駅からは路線バスで約15分、またはJR金沢駅から北鉄バス「野町駅」バス停下車で到着します。野町駅は昭和の面影が残るレトロな駅舎が特徴で、ローカル線の旅情を感じられるスタート地点です。
石川線に乗車する前に、にし茶屋街の散策はいかがでしょうか。ひがし茶屋街や主計町茶屋街に比べて観光客が少なく、落ち着いた雰囲気の中で金沢の花街文化に触れることができます。格子戸の美しい茶屋建築が並ぶ通りには、甘味処や和菓子店もあり、旅のスタートにふさわしいひとときを過ごせます。にし茶屋街で金沢の茶屋文化を堪能してから、石川線の鉄道旅へ出発しましょう。
新西金沢駅 — JR西金沢駅との北鉄石川線乗り換えポイント
野町駅から2つ目の新西金沢駅は、JR北陸本線の西金沢駅と隣接する乗り換え駅です。JR金沢駅からは北陸本線で1駅・約3分の西金沢駅で下車し、徒歩約1分で石川線の新西金沢駅に乗り換えられます。金沢駅から直接石川線に乗りたい場合は、このルートが便利です。バスで野町駅まで行くよりも効率的にアクセスできるため、覚えておくと役立ちます。
野々市駅・野々市工大前駅 — 北鉄石川線沿線のカレーのまち
石川線が金沢市域を出て最初に通るのが野々市市です。野々市駅と野々市工大前駅の2駅が野々市市内にあります。野々市工大前駅は金沢工業大学の最寄り駅で、学生の利用が多い駅です。
野々市市は「カレーのまち」として知られており、人口あたりのカレー店の数が多い街です。チャンピオンカレーの本店をはじめ、個性豊かなカレー店が市内に点在しています。石川線で途中下車して、金沢のB級グルメ「金沢カレー」を味わってみるのも面白い鉄道旅の楽しみ方です。濃厚なルーにカツを載せ、ステンレスの皿で提供される金沢カレーは、一度食べたらやみつきになる味わいです。
額住宅前駅〜四十万駅 — 北鉄石川線で巡る金沢の住宅街
野々市市を過ぎると、石川線は再び金沢市に入り、額住宅前駅、馬替駅、四十万(しじま)駅と金沢南部の住宅街を走ります。この区間は通勤・通学の乗客が多い生活路線としての性格が強く、車窓からは閑静な住宅街が続きます。観光スポットは少ない区間ですが、地元の暮らしに溶け込んだローカル線の日常風景を感じられる区間です。四十万駅を過ぎると列車は次第に山あいへと入り始め、車窓の風景が里山らしくなっていきます。
鶴来駅 — 北鉄石川線の終点・白山比咩神社の門前町
石川線の終着駅・鶴来(つるぎ)駅に到着すると、金沢の都市部とはまったく異なる門前町の風情が広がります。鶴来の門前町と獅子吼高原は、白山比咩神社の参拝客で古くから栄えた町で、歴史ある街並みと地元の酒蔵が点在する魅力的なエリアです。

鶴来駅から白山比咩神社へは徒歩約20分、または加賀白山バスで約5分です。白山比咩神社は全国約3,000社の白山神社の総本宮であり、「白山さん」の愛称で親しまれる加賀国一の宮です。白山の伏流水が流れる境内は厳かな雰囲気に包まれ、縁結びの御利益で多くの参拝客が訪れます。表参道の杉並木は四季を通じて美しく、特に秋の紅葉シーズンは格別の風情です。
鶴来駅周辺の見どころ — 酒蔵めぐりと獅子吼高原
鶴来は白山の伏流水に恵まれた土地柄、古くから酒造りが盛んです。鶴来駅周辺には「菊姫」「萬歳楽」といった石川を代表する銘酒の蔵元が点在しており、酒蔵めぐりが楽しめます。白山の地酒でも紹介しているように、白山の伏流水で仕込まれた日本酒は、キレのある辛口から芳醇な味わいまでバラエティ豊か。酒蔵の中には見学や試飲ができるところもあり、鉄道旅ならお酒を楽しんでも安心して帰れるのがうれしいポイントです。
獅子吼(ししく)高原は、鶴来駅からバスまたはタクシーで約5分のゴンドラ乗り場からアクセスできる高原です。ゴンドラで山頂まで約5分の空中散歩を楽しむと、手取川扇状地と日本海を一望する大パノラマが広がります。パラグライダーの聖地としても有名で、色とりどりのパラグライダーが空を舞う光景を見ることができます。秋にはゴンドラから眼下に広がる紅葉を楽しめ、山頂にはカフェもあるのでゆっくりと過ごせます。
北鉄石川線の沿線観光モデルコース
北鉄石川線を使った日帰りの鉄道旅モデルコースを紹介します。
半日コース(約4〜5時間)
にし茶屋街散策→野町駅→(石川線約30分)→鶴来駅→(徒歩またはバス)→白山比咩神社参拝→鶴来の門前町散策・酒蔵めぐり→鶴来駅→(石川線約30分)→野町駅
1日コース(約6〜7時間)
にし茶屋街散策→野町駅→(石川線約30分)→鶴来駅→(バス約5分)→白山比咩神社参拝→(徒歩で門前町へ)→酒蔵めぐり(菊姫・萬歳楽)→ランチ(地元の蕎麦や郷土料理)→(バスまたはタクシー約5分)→獅子吼高原ゴンドラで山頂パノラマ→鶴来駅→(石川線約30分)→野町駅
鶴来は金沢から約30分とアクセスが良く、白山信仰の歴史、地酒、自然のパノラマと見どころが凝縮されたエリアです。鉄道旅ならではの気軽さで、金沢観光とセットで楽しんでみてください。
北鉄石川線の歴史 — かつては白山下まで延びていたローカル線
北鉄石川線の歴史は1915年(大正4年)に遡ります。当初は金沢と白山麓の温泉地を結ぶ路線として開業し、その後延伸を重ねて、最盛期には鶴来駅のさらに先、加賀一の宮駅を経て白山下駅まで路線が延びていました。白山下駅は白山登山の起点として多くの登山者や参拝客が利用し、白山信仰と観光の足として重要な役割を担っていました。
しかしモータリゼーションの進展により乗客数は減少の一途をたどり、2009年(平成21年)に鶴来駅〜加賀一の宮駅間が廃止されました(白山下駅までの区間はそれ以前の1987年に廃止)。かつての加賀一の宮駅は白山比咩神社のすぐそばにあり、現在も駅舎跡やホーム跡が残っています。廃線区間の面影を探しながら歩くのも、鉄道ファンにとっては趣深い散策になるでしょう。現在の石川線も利用者減少の課題を抱えていますが、地元住民の大切な交通手段として、また観光路線として存続が期待されています。
北鉄石川線のアクセスと運行情報
北鉄石川線へのアクセスは、起点の野町駅またはJR乗り換えの新西金沢駅が便利です。金沢駅からは北鉄バスで野町駅まで約15分、またはJR北陸本線で西金沢駅まで約3分(新西金沢駅へ徒歩約1分で乗り換え)。運行間隔は日中約30分に1本で、始発は6時台、最終は22時台です。野町駅から鶴来駅までの運賃は片道500円前後で、全線の所要時間は約30分です。
なお、石川線ではICカードは利用できないため、現金またはきっぷでの乗車となります。1日フリーきっぷ(約1,000円)も販売されており、途中下車を楽しむ鉄道旅にはフリーきっぷの利用がお得です。車両は冷暖房完備の2両編成で、ワンマン運転のため降車時に運賃箱に支払う方式です。ローカル線の旅ならではの、のんびりとした時間を楽しんでください。
北鉄石川線で楽しむ金沢から白山麓への鉄道旅
北鉄石川線は、わずか30分で金沢の城下町から白山麓の門前町へと旅人を運んでくれるローカル線です。にし茶屋街の風情ある街並みから出発し、住宅街や学園都市を抜け、白山信仰の聖地・鶴来へ。終点では白山比咩神社への参拝、酒蔵めぐり、獅子吼高原のパノラマと、短い路線ながら充実した鉄道旅が楽しめます。金沢観光の定番コースに少し変化をつけたい方、ローカル線の旅情を味わいたい方に、北鉄石川線はおすすめの路線です。車窓に流れる金沢の日常風景と白山麓の自然を眺めながら、のんびりとした鉄道旅をお楽しみください。
写真クレジット:
北鉄石川線7700系電車 — MaedaAkihiko(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)
白山比咩神社の本殿 — dennis bloodnok(Wikimedia Commons / CC BY 2.0)









