北陸のローカル線完全ガイド|のと鉄道・万葉線・えちぜん鉄道など全路線の魅力と沿線観光

北陸は日本有数のローカル線の宝庫です。海沿いの断崖を縫うように走る路線、のどかな田園地帯を横切る路線、城下町の街並みに溶け込む路面電車――石川・富山・福井の三県には、個性豊かな鉄道路線がいくつも走っています。車窓からは七尾湾の穏やかな海、立山連峰の雄大な山並み、日本海に沈む夕陽など、北陸ならではの絶景が次々と現れます。北陸新幹線の延伸で東京や大阪からのアクセスが向上した今こそ、ローカル線に揺られてゆっくりと北陸の魅力を味わう旅に出かけてみませんか。この記事では、北陸三県の主要ローカル線を全路線網羅し、各路線の見どころ・沿線観光・お得なきっぷ情報まで徹底ガイドします。

えちぜん鉄道の列車
えちぜん鉄道(Photo: eli fessler / CC BY-SA 4.0)

北陸のローカル線が旅人を惹きつける理由

北陸のローカル線が全国の鉄道ファンや旅行者を惹きつける理由は、大きく3つあります。

第一に、車窓風景の多彩さです。のと鉄道では七尾湾の青い海が目の前に広がり、万葉線の車窓からは高岡の古い町並みが流れ、黒部峡谷トロッコ電車では日本一深いV字峡谷の紅葉や新緑を間近に感じられます。同じ北陸でも路線ごとに風景がまったく違うため、何度訪れても新鮮な感動があります。

第二に、地域に根差した個性です。えちぜん鉄道のアテンダントによる車内案内、万葉線のドラえもんトラム、のと鉄道の「のと里山里海号」など、それぞれの路線が沿線の文化や歴史を大切にしながら独自のサービスを展開しています。乗ること自体が目的になる、そんな魅力がローカル線にはあります。

第三に、沿線の観光資源の豊富さです。温泉、城下町、世界遺産級の景観、新鮮な海の幸。ローカル線の駅を降りればそこには北陸ならではの体験が待っています。レンタカーでは見過ごしてしまうような小さな駅前集落にこそ、知られざる名店や絶景ポイントが隠れています。

北陸のローカル線 — 石川県

加賀百万石の城下町・金沢を起点に、能登半島の先端部まで複数の鉄道路線が延びています。北陸新幹線の金沢駅を拠点に、各ローカル線で石川県の多彩な魅力を巡ることができます。

のと鉄道 — 七尾湾の絶景を車窓から楽しむ能登の看板路線

北陸新幹線W7系車両
北陸新幹線(Photo: MaedaAkihiko / CC BY-SA 4.0)

のと鉄道は七尾駅から穴水駅までの33.1kmを結ぶ、能登半島を代表するローカル線です。最大の魅力は車窓から眺める七尾湾の絶景。特に能登中島駅〜西岸駅間では線路が海岸線に沿って走り、穏やかな内海の風景が広がります。

観光列車「のと里山里海号」は七尾湾のビュースポットで一時停車するサービスがあり、地元食材を使ったスイーツや寿司を味わいながら絶景を堪能できます。沿線には和倉温泉や能登島への玄関口があり、のと鉄道の旅は能登観光のハイライトのひとつです。2024年の能登半島地震からの復旧を果たし、能登の人々の暮らしと観光を支え続けています。

北陸鉄道 浅野川線 — 金沢駅から内灘砂丘へ走るレトロ電車

北鉄浅野川線は北鉄金沢駅から内灘駅までの6.8kmを結ぶ短い路線です。浅野川に沿ってレトロな2両編成の電車が走り、約17分で日本海側の内灘砂丘へ到着します。金沢駅の地下ホームから出発する独特の雰囲気も魅力的で、沿線にはひがし茶屋街の最寄り駅である七ツ屋駅もあります。内灘砂丘では日本海に沈む夕日を眺めることができ、金沢観光の合間にふらりと乗れる手軽さが人気です。

北陸鉄道 石川線 — 金沢の城下町から白山麓の門前町・鶴来へ

北鉄石川線は野町駅から鶴来駅までの13.8kmを結ぶ路線です。金沢の住宅街を抜けると田園風景が広がり、終点の鶴来は白山比め神社の門前町として栄えた歴史ある町です。白山登山やハイキングの玄関口としても利用されており、鶴来駅周辺には酒蔵や古い町並みが残っています。野町駅は長町武家屋敷跡那谷寺方面への乗り継ぎ拠点にもなります。

IRいしかわ鉄道 — 金沢から加賀温泉郷を結ぶ旧北陸本線

IRいしかわ鉄道は、北陸新幹線の延伸に伴いJRから経営分離された第三セクター鉄道です。金沢駅から大聖寺駅までの区間を運行し、加賀温泉郷(山代温泉・山中温泉・片山津温泉)へのアクセス路線として重要な役割を担っています。かつての北陸本線の線路をそのまま使用しているため、特急並みの速度で快適に移動できるのが特徴です。あいの風とやま鉄道との直通運転もあり、金沢〜富山間の移動にも便利です。

JR七尾線 — 金沢から能登の玄関口・七尾へ

JR七尾線は金沢駅から七尾駅(一部列車は和倉温泉駅)までを結ぶ路線で、能登半島への鉄道アクセスの大動脈です。前半の金沢〜羽咋間では加賀平野の田園風景を車窓に楽しみ、千里浜海岸気多大社など石川県を代表する観光スポットへの最寄り駅を通過します。後半の羽咋〜七尾間では能登の里山風景が広がり、終点の七尾ではのと鉄道に乗り換えて能登半島の奥へと旅を続けることができます。

北陸のローカル線 — 富山県

富山県は「鉄道王国」とも呼ばれるほど多彩な鉄道路線が走る県です。日本初の本格的LRT(次世代型路面電車)を導入した富山市内の路面電車から、日本海沿いの絶景路線、黒部峡谷の秘境を走るトロッコ電車まで、鉄道ファンにはたまらない路線が揃っています。

富山地方鉄道・路面電車 — LRT先進都市のコンパクトシティを走る

富山の路面電車は、富山市内を走るセントラム(環状線)とポートラム(富山港線)、そして市内電車の3系統で構成されています。富山市はLRT(ライトレールトランジット)を活用した「コンパクトシティ」のモデル都市として全国的に注目されており、洗練されたデザインの低床車両が街なかを走る姿は富山の新しいシンボルです。

ポートラムで岩瀬地区まで足を延ばせば、北前船で栄えた港町の古い町並みや、富山湾越しの立山連峰の絶景を楽しめます。富山市内を路面電車で巡る1日モデルコースも人気で、富山城・富山市ガラス美術館・岩瀬の回転寿司などを効率よく回ることができます。また、富山地方鉄道の鉄道線は宇奈月温泉や立山駅への足としても重要で、立山黒部アルペンルートの富山側の起点でもあります。

万葉線 — ドラえもんトラムが走る高岡のレトロ路面電車

万葉線は高岡駅前から射水市の越ノ潟までの12.8kmを結ぶ路面電車です。最大の特徴は「ドラえもんトラム」。高岡市は藤子・F・不二雄先生の出身地であり、青いドラえもんカラーの路面電車が町を走る姿は子どもから大人まで大人気です。

高岡駅前を出発すると、高岡大仏や金屋町(鋳物師の町並み)など歴史ある高岡の中心部を通り、やがて庄川を渡って射水市へ。沿線には新湊内川(日本のベニス)や海王丸パーク、アドベンチャーガーデン射水など見どころが豊富です。レトロ電車「アイトラム」とドラえもんトラムのどちらが来るかは時刻表で確認でき、ドラえもんトラム狙いの乗車も可能です。

黒部峡谷トロッコ電車 — 日本一深いV字峡谷を走る絶景鉄道

黒部峡谷トロッコ電車は宇奈月駅から欅平駅までの20.1kmを約1時間20分かけて走る、日本屈指の山岳観光鉄道です。もともとは黒部川の電源開発のために敷設された専用軌道で、現在は一般観光客も乗車できます。

窓のないオープン型のトロッコ車両から眺める黒部峡谷の絶景は圧巻の一言。エメラルドグリーンの黒部川、深さ100mを超えるV字峡谷、いくつものトンネルと鉄橋を越えるスリリングな体験は他では味わえません。春の新緑、夏の深緑、秋の紅葉と季節ごとに車窓風景が変わり、特に10月中旬〜11月上旬の紅葉シーズンは全国から鉄道ファンや観光客が訪れます。終点の欅平では足湯や散策が楽しめるほか、2024年に一般開放された黒部宇奈月キャニオンルートで黒部ダムへ抜けることも可能になりました。

氷見線 — 雨晴海岸と立山連峰の車窓絶景を楽しむ富山湾沿いの路線

氷見線は高岡駅から氷見駅までの16.5kmを結ぶJR西日本の路線です。この路線最大の見どころは雨晴海岸付近の車窓風景。富山湾越しに3,000m級の立山連峰がそびえる壮大な景色は「世界で最も美しい湾」に認定された富山湾の真骨頂です。晴天の日には海面に立山連峰が映り込む幻想的な風景も見られます。

終点の氷見は「寒ブリ」で有名な漁師町。氷見漁港場外市場「ひみ番屋街」では新鮮な海鮮丼や氷見うどんを味わえます。万葉線と組み合わせて高岡を起点に1日で両方の路線を楽しむプランも人気です。

あいの風とやま鉄道 — 富山県を東西に貫く旧北陸本線

あいの風とやま鉄道は、北陸新幹線の開業に伴いJRから経営分離された第三セクター鉄道です。石動駅から越中宮崎駅まで富山県内を東西に貫く約100kmの路線で、かつての北陸本線の区間をそのまま引き継いでいます。富山駅を中心に高岡・魚津・黒部など県内主要都市を結ぶ生活路線であると同時に、車窓からは富山平野越しの立山連峰の眺望が楽しめます。IRいしかわ鉄道やえちごトキめき鉄道との直通運転もあり、北陸三県を横断する旅にも活用できます。

北陸のローカル線 — 福井県

福井県にもユニークなローカル線が走っています。地域密着型の運営と温かいサービスで知られるえちぜん鉄道と福井鉄道は、全国のローカル鉄道の手本となる存在です。

えちぜん鉄道 — アテンダントが案内する福井の人気ローカル線

えちぜん鉄道は福井駅を起点に2つの路線を持つローカル鉄道です。三国芦原線は福井駅からあわら湯のまち駅・三国港駅方面へ向かい、芦原温泉や東尋坊への足として観光客に利用されています。勝山永平寺線は福井駅から勝山駅までを結び、大本山永平寺や福井県立恐竜博物館へのアクセス路線です。

えちぜん鉄道の最大の特徴はアテンダントサービス。車内に乗務するアテンダントが観光案内やきっぷの購入サポートを行い、初めて訪れる旅行者にも安心の対応をしてくれます。このサービスは全国のローカル鉄道のモデルケースとして高く評価されています。福井駅では福井鉄道と相互乗り入れしており、一体的に福井市内と近郊の観光地を巡ることができます。

福井鉄道 — 路面電車と郊外電車が直通する全国でも珍しい路線

福井鉄道は福井市内の田原町駅から越前武生駅までの約21kmを結ぶ路線です。福井鉄道の最大の特徴は、路面区間と専用軌道区間が一体となった運行形態。福井市中心部では道路上を路面電車のように走り、郊外に出ると専用の線路を高速で走るという、全国的にも珍しい方式を採用しています。

福井駅前のフェニックス通りを走る低床車両「FUKURAM(フクラム)」は、福井市街地の新しいシンボルです。沿線には武生の打刃物の里や越前和紙の里など、福井の伝統工芸の産地が点在しています。えちぜん鉄道との相互乗り入れにより、田原町駅で乗り換えなしに三国港方面や勝山方面へ直通する列車も運行されています。

北陸のローカル線で行くモデルコース

北陸のローカル線を使った日帰りモデルコースを3つご紹介します。いずれも北陸新幹線の主要駅を起点に、ローカル線の魅力を存分に楽しめるプランです。

のと鉄道で行く能登日帰りコース

金沢駅 →(JR七尾線・約1時間30分)→ 七尾駅 →(のと鉄道・約40分)→ 穴水駅 →(のと鉄道で戻る)→ 和倉温泉駅 → 和倉温泉で日帰り入浴 →(JR七尾線)→ 金沢駅

金沢駅からJR七尾線で能登路へ。七尾駅でのと鉄道に乗り換え、七尾湾の絶景車窓を楽しみながら穴水駅へ向かいます。穴水では名物の「牡蠣」を堪能し、帰路に和倉温泉で日帰り入浴をして金沢へ。余裕があれば「のと里山里海号」の予約もおすすめです。能登食祭市場で七尾の海鮮ランチも良いでしょう。

万葉線+氷見線で行く高岡・氷見日帰りコース

新高岡駅 →(城端線・3分)→ 高岡駅 →(万葉線・約45分)→ 越ノ潟 → 新湊内川散策・きっときと市場 →(万葉線で戻る)→ 高岡駅 →(氷見線・約30分)→ 氷見駅 → ひみ番屋街で海鮮ランチ →(氷見線)→ 高岡駅

新幹線の新高岡駅から城端線で高岡駅へ移動し、午前中は万葉線のドラえもんトラムに乗車。越ノ潟や新湊の内川沿いを散策します。午後は氷見線に乗り換え、雨晴海岸の車窓絶景を楽しみながら氷見へ。ひみ番屋街で新鮮な海鮮を満喫して帰路につきます。高岡大仏や瑞龍寺の観光も組み合わせられます。

えちぜん鉄道で行く福井日帰りコース

福井駅 →(えちぜん鉄道 勝山永平寺線・約50分)→ 勝山駅 → 福井県立恐竜博物館 →(勝山永平寺線で戻る)→ 福井駅 →(えちぜん鉄道 三国芦原線・約45分)→ 三国港駅 → 東尋坊散策 →(三国芦原線)→ 福井駅

北陸新幹線福井駅からえちぜん鉄道に乗車。午前中は勝山永平寺線で恐竜博物館へ向かい、世界三大恐竜博物館のひとつを見学します。福井駅に戻り、午後は三国芦原線で日本海へ。三国港駅から東尋坊まではバスまたは徒歩で向かい、迫力ある断崖絶壁の絶景を楽しみましょう。アテンダントさんに沿線のおすすめスポットを聞いてみるのも楽しい旅の醍醐味です。

北陸のローカル線旅のお得なきっぷ情報

北陸のローカル線をお得に楽しむための、主なフリーきっぷ・割引きっぷをまとめました。旅の計画に合わせて活用してください。

石川県のお得なきっぷ

  • のと鉄道 つこうてくだしフリーきっぷ:のと鉄道全線が1日乗り放題。七尾〜穴水間を往復するだけで元が取れるお得なきっぷです。「のと里山里海号」は別途座席指定券が必要です。
  • 北鉄バス・電車1日フリー乗車券:北陸鉄道の浅野川線・石川線と金沢市内の路線バスが1日乗り放題。金沢市内の観光に便利です。

富山県のお得なきっぷ

  • とやまロケーションフリーきっぷ:富山地方鉄道(鉄道線・市内電車)が乗り放題。立山や宇奈月温泉方面への日帰り旅にも使えます。
  • 万葉線1日フリーきっぷ:万葉線全線が1日乗り放題。ドラえもんトラムに何度でも乗車可能で、沿線観光施設の割引特典付きです。
  • 黒部峡谷トロッコ電車:事前にWeb予約すると割引料金で乗車できる場合があります。紅葉シーズンは混雑するため早めの予約がおすすめです。

福井県のお得なきっぷ

  • えちぜん鉄道 1日フリーきっぷ:えちぜん鉄道全線が1日乗り放題。三国芦原線と勝山永平寺線の両方を1日で楽しむ場合に最適です。
  • 福井鉄道・えちぜん鉄道 共通1日フリーきっぷ:福井鉄道とえちぜん鉄道の両方が1日乗り放題。福井市内から武生・三国港・勝山と幅広く移動できます。

北陸エリア共通のお得なきっぷ

  • 北陸おでかけtabiwaパス:JR西日本が販売するデジタルフリーきっぷで、北陸エリアのJR線や一部の第三セクター鉄道が乗り放題。WESTER会員限定でスマートフォンから購入できます。
  • 北陸新幹線 eチケット早特:北陸新幹線を割引料金で利用できるきっぷ。東京や大阪から北陸への往復交通費を節約し、浮いた分をローカル線の旅に充てるのがおすすめです。

各きっぷの料金・販売期間・購入方法は変更される場合がありますので、お出かけ前に各鉄道会社の公式サイトで最新情報をご確認ください。

北陸のローカル線で見つける、もうひとつの旅

北陸新幹線の延伸により、東京から金沢・福井へのアクセスは格段に便利になりました。しかし、北陸の本当の魅力は新幹線の停まる大きな駅の先にあります。のと鉄道で七尾湾の青い海を眺めながら能登の小さな漁港へ。万葉線のドラえもんトラムに揺られて高岡の古い町並みを抜け、射水の港町へ。えちぜん鉄道のアテンダントさんに見送られて勝山の恐竜ワールドへ――。

ローカル線の旅は、速さや効率とは無縁です。車窓から見える田んぼのあぜ道、無人駅のホームに咲く季節の花、地元のおじいさんやおばあさんとの何気ない会話。そんな小さな出会いこそが、ローカル線旅の最大の魅力かもしれません。次の北陸旅行では、ぜひローカル線に乗って、ガイドブックには載っていない北陸のもうひとつの顔を見つけてみてください。

北陸のローカル線に関する個別の詳しい記事もあわせてご覧ください。石川県ではのと鉄道北鉄浅野川線北鉄石川線IRいしかわ鉄道JR七尾線(前編)JR七尾線(後編)、富山県では富山の路面電車万葉線黒部峡谷トロッコ電車氷見線、福井県ではえちぜん鉄道の記事をぜひお読みください。

写真クレジット:
えちぜん鉄道 — eli fessler(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)
北陸新幹線 — MaedaAkihiko(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)

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