金沢の庭園めぐり — 兼六園以外の隠れた名庭を訪ねて

金沢といえば日本三名園の兼六園が有名ですが、実はこの城下町には兼六園以外にも珠玉の庭園が数多く点在しています。加賀藩の武家文化や茶の湯の伝統が育んだ名庭は、観光客で賑わう兼六園とは異なり、静かに日本庭園の美を堪能できる穴場スポットばかりです。西田家庭園(玉泉園)、松風閣庭園、彦三緑地など、金沢の隠れた名庭を巡る庭園散歩に出かけてみませんか。

金沢の庭園の魅力 — 兼六園だけではない名庭の宝庫

金沢が「庭園都市」と呼ばれるのは、兼六園だけでなく、城下町の至るところに美しい庭園が残されているからです。加賀藩では茶の湯文化が武士の教養として奨励され、各屋敷に趣向を凝らした庭が造られました。また、金沢は豊富な水に恵まれた水の都であり、辰巳用水をはじめとする用水を引き込んだ池泉回遊式庭園が多く見られるのが特徴です。

現在も市内には大小さまざまな庭園が残り、その多くが一般公開されています。兼六園の壮大なスケールとは異なる、繊細で親密な空間美を持つこれらの庭園は、金沢の文化の奥深さを感じさせてくれます。観光の合間にふらりと立ち寄れる庭園も多く、混雑を避けてゆったりと日本庭園の美を楽しみたい方におすすめです。

西田家庭園(玉泉園)— 金沢最古の茶庭と池泉回遊式庭園

玉泉園の池泉回遊式庭園と茶室
西田家庭園(玉泉園)の美しい池泉(Photo: 663highland / CC BY 2.5)

兼六園のすぐ隣にありながら、観光客にあまり知られていない隠れた名庭が西田家庭園「玉泉園」です。加賀藩士・脇田家の庭園として約400年前に造営が始まり、四代・約100年をかけて完成した池泉回遊式庭園で、上・中・下の三段からなる優雅な構成が特徴です。兼六園よりも古い歴史を持つ金沢最古級の庭園として、庭園愛好家から高い評価を受けています。

庭園内には金沢最古の茶室「灑雪亭(さいせつてい)」があり、裏千家の始祖・仙叟宗室の指導で建てられたと伝わります。上段の庭は辰巳用水から引いた水が流れ落ちる滝石組みが見事で、中段の池には錦鯉が優雅に泳ぎます。入園料は大人700円で、抹茶と和菓子のセット(別途料金)もいただけます。兼六園観光と組み合わせて訪れるのがおすすめです。

松風閣庭園と金沢の武家庭園

松風閣庭園は、加賀藩の重臣・横山家の別邸庭園として造られた池泉回遊式庭園です。金沢市指定名勝に指定されており、約1,800平方メートルの敷地に池・築山・石組みが配された風雅な空間が広がります。特に秋の紅葉が美しく、モミジが池面に映り込む光景は息をのむ美しさです。現在は一般公開されていますが、訪れる人は少なく、静寂の中で庭園を独り占めできることも珍しくありません。

金沢には松風閣庭園のほかにも武家庭園が点在しています。長町武家屋敷跡エリアにある野村家庭園は、米国の庭園誌で高く評価された小さな名庭で、狭い空間に凝縮された庭園美が見どころです。また、寺島蔵人邸の庭園はドウダンツツジの大木が有名で、春の白い花と秋の紅葉が見事。いずれも金沢の武家文化が育んだ庭園美の傑作です。

金沢の公開庭園 — 彦三緑地・辻家庭園ほか

金沢・彦三緑地の日本庭園風景
金沢市中心部にある彦三緑地の庭園(Photo: 663highland / CC BY 2.5)

彦三緑地は金沢市中心部にある無料の日本庭園で、かつて加賀藩の薬草園があった場所に造られました。池泉を中心に四季の花木が植えられ、春には枝垂れ桜、初夏には花菖蒲が咲き誇ります。市民の憩いの場として親しまれており、金沢観光の途中にふらりと立ち寄れる癒しスポットです。

辻家庭園(旧横山男爵邸庭園)は、国登録有形文化財に指定された庭園で、犀川沿いの高台から金沢の街並みを望む眺望が魅力です。現在はレストラン・ウエディング施設として活用されており、食事やカフェ利用で庭園を楽しめます。そのほか、金沢神社近くの舟の御亭(おちん)や、成巽閣の庭園など、金沢城周辺にも見逃せない庭園が点在しています。

金沢の庭園めぐり周辺の見どころ

庭園めぐりの起点となる兼六園は、言わずと知れた日本三名園のひとつ。四季折々の景観美は金沢観光のハイライトです。兼六園に隣接する金沢城公園では、復元された菱櫓や五十間長屋、玉泉院丸庭園など加賀百万石の城郭美を堪能できます。特に玉泉院丸庭園は加賀藩三代藩主・前田利常が造営を始めた大名庭園で、石垣を借景にした独特の美しさがあります。

金沢の茶の湯文化は庭園と深く結びついており、茶室のある庭園を巡ることでその真髄に触れることができます。また、鈴木大拙館の「水鏡の庭」は現代建築と水面が作り出す瞑想的な空間で、伝統的な日本庭園とは異なる「庭」の在り方を提示しています。石川県立美術館の前庭も季節の美しさを楽しめるスポットです。

金沢の庭園めぐりのアクセス・モデルコース

金沢の庭園は市中心部に集中しているため、徒歩やバスで効率よく巡ることができます。おすすめのモデルコースは、兼六園を起点に玉泉園(徒歩5分)→金沢城玉泉院丸庭園(徒歩10分)→松風閣庭園(バスで約15分)→長町・野村家庭園(徒歩5分)→彦三緑地(徒歩15分)というルートで、所要時間は半日程度です。

金沢駅からは城下まち金沢周遊バスが便利で、兼六園下や広坂で下車すればすぐに庭園エリアにアクセスできます。各庭園の入園料は無料〜700円程度と手頃で、開園時間は概ね9:00〜17:00(季節により変動)です。庭園によっては冬季休園の場合もあるため、事前の確認をおすすめします。写真撮影は基本的に許可されていますが、三脚の使用が制限されている庭園もあります。雨の日の庭園は苔や石が一層美しく映えるため、金沢らしい雨の風情を楽しむのも一興です。


写真クレジット:
玉泉園の池泉回遊式庭園 — 663highland(Wikimedia Commons / CC BY 2.5)
玉泉園の茶室と庭園風景 — 663highland(Wikimedia Commons / CC BY 2.5)
彦三緑地の日本庭園 — Daderot(Wikimedia Commons / CC0)

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