主計町茶屋街 — 浅野川沿いのガス灯が灯るしっとり茶屋街
主計町(かずえまち)茶屋街は、浅野川沿いにひっそりと佇む金沢三茶屋街の一つです。文豪・泉鏡花ゆかりの地としても知られ、夕暮れ時にガス灯が灯る石畳の小路は、金沢でも随一の風情を誇ります。「暗がり坂」や「あかり坂」といった情緒あふれる坂道が残り、訪れる人の心を江戸時代へと誘います。
主計町茶屋街の概要 ― 浅野川沿いの静かな花街

主計町茶屋街は、ひがし茶屋街・にし茶屋街と並ぶ金沢三茶屋街の一つで、浅野川の南岸に位置しています。「主計町」という名前は、江戸時代にこの地に加賀藩士・富田主計(とだかずえ)の屋敷があったことに由来します。細い路地に千本格子の茶屋建築が軒を連ね、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されています(平成20年選定、面積約0.6ヘクタール)。
ひがし茶屋街のすぐ対岸に位置しながらも、主計町茶屋街は観光客が比較的少なく、より落ち着いた雰囲気が漂います。浅野川のせせらぎを聞きながら歩く石畳の通りには、昔ながらの料亭やお茶屋が建ち並び、現在も芸妓が活躍する現役の花街としての風格を保っています。
特に夕暮れ時から夜にかけての主計町は格別です。通りに設置されたガス灯が一つ一つ灯り始めると、茶屋建築の格子窓から漏れる明かりと相まって、まるで時が止まったかのような幻想的な雰囲気に包まれます。映画やドラマのロケ地としても頻繁に使われる、金沢屈指の美しい景観です。
暗がり坂・あかり坂 ― 風情ある二つの坂道

主計町茶屋街の見どころとして欠かせないのが、「暗がり坂」と「あかり坂」という二つの印象的な坂道です。
「暗がり坂」は、久保市乙剣宮(くぼいちおとつるぎぐう)の境内から主計町へと下る石段の坂道です。木々に囲まれた薄暗い石段が茶屋街へと続いており、かつてはこの坂を通って人知れず芸妓のもとへ通う旦那衆の「裏道」だったと伝えられています。文豪・泉鏡花は子供時代、毎朝この神社の境内から暗がり坂を下り、中の橋を渡って小学校へ通っていたそうです。現在、坂の上には泉鏡花記念館が建てられており、鏡花の生涯と作品世界に触れることができます。
暗がり坂と平行して走る「あかり坂」は、尾張町から主計町へと通じる坂道で、作家・五木寛之氏が命名しました。坂の入口に立つ標柱には「暗い夜のなかに明かりをともすような美しい作品を書いた鏡花を偲んで、あかり坂と名づけた。あかり坂は、また、上がり坂の意でもある」という五木氏の言葉が刻まれています。暗がり坂が「隠れた道」なら、あかり坂は「光へ向かう道」。対照的な二つの坂道を歩き比べてみるのも、主計町散策の楽しみの一つです。
泉鏡花ゆかりの地を巡る
主計町茶屋街は、明治の文豪・泉鏡花と深い縁で結ばれた土地です。鏡花は金沢市下新町(現在の泉鏡花記念館の場所)に生まれ、幼少期をこの界隈で過ごしました。浅野川や主計町の情景は、『照葉狂言』『義血侠血』などの作品にたびたび登場し、鏡花文学の原風景となっています。
主計町から暗がり坂を上った先にある泉鏡花記念館は、鏡花の生家跡に建てられた施設で、自筆原稿や初版本、愛用品などが展示されています。鏡花の幻想的な文学世界と、実際にその舞台となった主計町の風景を重ね合わせながら散策すると、一層深い味わいを感じることができるでしょう。
アクセス・基本情報
| 所在地 | 〒920-0908 石川県金沢市主計町 |
| アクセス | 金沢駅から城下まち金沢周遊バスで「橋場町」下車、徒歩約5分 |
| 徒歩の場合 | 金沢駅から約25分 |
| 車でのアクセス | 金沢東IC・金沢森本ICから約15分 / 金沢西ICから約25分 |
| 見学料金 | 散策自由(無料) |
| 文化財指定 | 国の重要伝統的建造物群保存地区(平成20年選定) |
周辺の観光スポット
- ひがし茶屋街 — 浅野川を挟んだ対岸に位置する金沢最大の茶屋街。主計町から徒歩5分ほどで行き来できます
- 兼六園 — 日本三名園の一つ。主計町から徒歩15分ほどの距離にあり、合わせて巡るのがおすすめです
- 金沢城公園 — 加賀百万石の居城跡。壮大な石垣や復元された菱櫓・五十間長屋が見どころです
- 金沢蓄音器館 — 世界の名蓄音器約600台を所蔵する博物館。レコード鑑賞会も開催されています
写真クレジット:
主計町茶屋街 — 663highland(Wikimedia Commons / CC BY 2.5)
主計町茶屋街 路地 — Daderot(Wikimedia Commons / CC0)
主計町茶屋街と浅野川 — Daderot(Wikimedia Commons / CC0)






