石川県の古墳まとめ — 能美古墳群・雨の宮古墳群・柴垣古墳など加賀と能登の古代王墓を巡る
石川県には、古墳時代(3世紀後半〜7世紀)に築かれた数多くの古墳が残されています。加賀地方の能美古墳群や能登地方の雨の宮古墳群をはじめ、前方後円墳・前方後方墳・円墳など多様な形状の古墳が点在し、古代の北陸における権力構造や文化交流の姿を今に伝えています。本記事では、石川県内の主要な古墳・古墳群を地域別にまとめ、それぞれの特徴や出土品、アクセス情報をご紹介します。古墳めぐりの観光プランにぜひお役立てください。
目次
石川県の古墳の概要 — 加賀と能登をつなぐ古代の歴史
石川県の古墳は、大きく加賀地方(南部)と能登地方(北部)に分布しています。加賀地方では能美市を中心に大規模な古墳群が形成され、畿内(大和政権)との強い結びつきを示す前方後円墳が多く見られます。一方、能登地方では前方後方墳が多いのが特徴で、日本海を通じた独自の交易ネットワークの存在がうかがえます。
古墳の築造時期は4世紀から6世紀にかけてが中心で、出土品には鉄製武器・馬具・装身具・須恵器・埴輪などがあり、被葬者が相当な権力を持つ首長であったことを物語っています。石川県内の主要な古墳の多くは国指定の史跡として保全され、公園や資料館が整備されているため、気軽に見学できます。
能美古墳群(能美市)— 加賀最大の古墳群と国史跡の前方後円墳

能美古墳群は石川県能美市に広がる、加賀地方最大の古墳群です。秋常山・和田山・末寺山・西山・寺井山の5つの丘陵に、前方後円墳・前方後方墳・方墳・円墳など合計約70基が集中しています。2023年に国史跡に指定されました。
秋常山古墳群
能美古墳群の中核をなす秋常山1号墳は、全長約140mの前方後円墳で、北陸地方最大級の規模を誇ります。4世紀後半の築造と推定され、加賀地方に大きな勢力を持った首長の墓と考えられています。隣接する秋常山2号墳(方墳)からは朱塗りの石棺や鏡・玉類などの副葬品が出土し、大和政権との密接な関係が指摘されています。古墳は復元整備されており、墳丘に登って当時の規模を体感できます。
和田山古墳群
和田山丘陵には20基以上の古墳が集中し、前方後円墳の和田山5号墳(全長約70m)などが確認されています。須恵器や埴輪の出土から5世紀から6世紀にかけての築造と推定され、秋常山古墳群の首長の系譜を引き継ぐ勢力の墓域とみられています。
能美ふるさとミュージアム
能美古墳群の出土品を展示する拠点施設が「能美ふるさとミュージアム」です。秋常山2号墳出土の石棺(レプリカ)や、銅鏡・玉類・鉄製品などの副葬品、各古墳のジオラマ模型などを通じて、古墳時代の能美の姿を学べます。能美古墳群を訪れる際は、まずミュージアムで予備知識を得てから古墳を巡るのがおすすめです。
アクセス:JR能美根上駅からタクシー約10分、または北陸自動車道「能美根上スマートIC」から車で約10分。
雨の宮古墳群(中能登町)— 能登最大の前方後方墳と眉丈山の古代王墓

雨の宮古墳群は、石川県中能登町の眉丈山(びじょうざん)山頂付近に築かれた、能登地方を代表する古墳群です。36基の古墳で構成され、国指定史跡に指定されています。標高約188mの山頂に古墳が築かれた立地は全国的にも珍しく、「天空の古墳群」とも呼ばれます。
1号墳は全長約64mの前方後方墳で、石川県最大の前方後方墳です。4世紀中頃の築造と推定され、割竹形木棺から碧玉製管玉や鉄剣などが出土しています。2号墳は全長約65mの前方後円墳で、1号墳とほぼ同じ規模を持ちます。前方後方墳と前方後円墳が隣り合って築かれているのは全国的にも珍しい事例で、被葬者同士の関係(世代交代や勢力の転換)が議論されています。
古墳群の麓には「雨の宮能登王墓の館」があり、出土品のレプリカや古墳群の解説パネルを見学できます。墳頂からは能登の山々と田園風景を一望でき、歴史散策とハイキングを兼ねた訪問がおすすめです。
アクセス:のと里山海道「上棚矢駄IC」から車で約15分。JR七尾線「良川駅」からタクシー約10分。
柴垣古墳(羽咋市)— 日本海を望む能登の前方後円墳
柴垣古墳は、石川県羽咋市柴垣町の海岸近くに位置する前方後円墳です。全長約50mで、日本海を望む丘陵上に築かれた立地が特徴的です。5世紀前半の築造と推定され、能登半島北部における有力首長の墓と考えられています。
墳丘からは日本海の絶景を一望でき、古代の首長がこの地を拠点とした理由がうかがえます。周辺には能登国一宮の気多大社や、千里浜なぎさドライブウェイがあり、能登観光と組み合わせた訪問がおすすめです。
アクセス:のと里山海道「柳田IC」から車で約15分。JR羽咋駅からタクシー約15分。
散田金谷古墳(羽咋市)— 北陸最大級の横穴式石室
散田金谷古墳(さんでんかなやこふん)は、羽咋市散田町に所在する6世紀後半の円墳です。直径約23mと規模は大きくありませんが、全長約11mに及ぶ巨大な横穴式石室を持つことで知られ、石室の規模は北陸地方でも屈指です。国指定史跡に指定されています。
石室は現在も内部を見学できる状態で保存されており、巨石を積み上げた古墳時代後期の高い石積み技術を間近に観察できます。古墳時代末期にもこの地域に強大な権力を持つ首長が存在したことを示す貴重な史跡です。
アクセス:JR羽咋駅からタクシー約10分。柴垣古墳とあわせた見学が可能です。
須曽蝦夷穴古墳(七尾市)— 能登島に残る高句麗式横穴墓
須曽蝦夷穴古墳(すそえぞあなこふん)は、七尾市能登島の丘陵上に築かれた7世紀前半の古墳で、国指定史跡です。高句麗の古墳に見られるドーム型天井の横穴式石室を持つことが最大の特徴で、朝鮮半島との文化的交流を示す貴重な遺跡として注目されています。
石室は2基の玄室を持つ特異な構造で、天井部のドーム状の持ち送り構造は日本では非常に珍しく、高句麗系渡来人の関与が指摘されています。古墳からは須恵器や鉄製品が出土しており、能登島を拠点とした海洋交易の中継者としての被葬者像が浮かび上がります。七尾市ののとじま水族館とあわせた見学がおすすめです。
アクセス:能登島大橋を渡り車で約20分。のとじま水族館から車で約10分。
河田山古墳群(小松市)— 加賀南部の首長墓と小松市立博物館
河田山古墳群(こうだやまこふんぐん)は、小松市の丘陵上に分布する古墳群で、国指定史跡です。4世紀から6世紀にかけて築造された前方後円墳・前方後方墳・方墳・円墳が約20基確認されており、加賀南部の有力首長の墓域とみられています。
1号墳は全長約50mの前方後方墳で、加賀南部では最古級の古墳の一つです。出土した鏡や玉類は小松市立博物館で見学でき、勾玉づくり体験なども開催されています。周辺には安宅の関跡や那谷寺など、歴史スポットが充実しています。
アクセス:JR小松駅からタクシー約15分。北陸自動車道「小松IC」から車で約10分。
石川県の古墳めぐりモデルコース
石川県の主要な古墳を効率よく巡るなら、以下のモデルコースがおすすめです。
【加賀エリア・半日コース】
能美ふるさとミュージアム → 秋常山古墳群 → 和田山古墳群(所要約3時間)。出土品の展示を見てから墳丘を歩くと、古墳時代の加賀の姿が鮮やかに浮かび上がります。
【能登エリア・1日コース】
雨の宮古墳群・能登王墓の館 → 柴垣古墳 → 散田金谷古墳 → 気多大社(所要約5〜6時間)。能登の古代王墓から古墳時代後期の石室まで、時代の流れを追いながら能登の歴史を満喫できます。
石川県の観光全般については「金沢観光おすすめスポット30選」や「能登半島ドライブコース完全ガイド」もぜひご覧ください。歴史好きの方には石川県立歴史博物館もおすすめです。
石川県の主要古墳一覧
| 古墳名 | 所在地 | 墳形 | 規模 | 時期 | 指定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 秋常山1号墳 | 能美市 | 前方後円墳 | 全長約140m | 4世紀後半 | 国史跡 |
| 雨の宮1号墳 | 中能登町 | 前方後方墳 | 全長約64m | 4世紀中頃 | 国史跡 |
| 雨の宮2号墳 | 中能登町 | 前方後円墳 | 全長約65m | 4世紀後半 | 国史跡 |
| 柴垣古墳 | 羽咋市 | 前方後円墳 | 全長約50m | 5世紀前半 | 市指定 |
| 散田金谷古墳 | 羽咋市 | 円墳 | 直径約23m | 6世紀後半 | 国史跡 |
| 須曽蝦夷穴古墳 | 七尾市 | 方墳 | 一辺約17m | 7世紀前半 | 国史跡 |
| 河田山1号墳 | 小松市 | 前方後方墳 | 全長約50m | 4世紀 | 国史跡 |
| 和田山5号墳 | 能美市 | 前方後円墳 | 全長約70m | 5世紀 | 国史跡 |
写真クレジット:
秋常山古墳の全景 — クハ419-5(Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0)
雨の宮2号墳 — 名古屋太郎(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)









