前田利家とまつ — 加賀百万石を築いた戦国夫婦のゆかりの地

加賀百万石の礎を築いた前田利家と、その妻・まつ。戦国時代から江戸時代初期にかけて、この夫婦は知略と胆力で加賀藩を日本最大の外様大名へと押し上げました。金沢の街には利家とまつゆかりの史跡が数多く残り、二人の足跡を辿ることで金沢の歴史がより深く理解できます。NHK大河ドラマ『利家とまつ』でも描かれた戦国夫婦のゆかりの地を巡る歴史散歩をご紹介します。

前田利家とまつの生涯 — 加賀百万石を築いた戦国夫婦

金沢城公園に建つ前田利家の騎馬像
金沢城公園の前田利家像(Photo: MathieuMD / CC BY-SA 4.0)

前田利家(1539〜1599)は尾張国荒子(現在の名古屋市)出身の武将で、織田信長の側近として頭角を現しました。「槍の又左」の異名を持つ猛将でありながら、政治手腕にも優れ、信長・秀吉の天下統一に大きく貢献しました。1583年に金沢城に入城し、加賀・能登・越中の三国を治める加賀百万石の基盤を築きました。

妻のまつ(芳春院、1547〜1617)は利家の従妹にあたり、12歳で利家に嫁ぎました。聡明で気丈な女性として知られ、11人もの子をもうけながら、戦国の世を利家と共に生き抜きました。利家亡き後も前田家の存続に尽力し、加賀藩の安泰を守るために自ら人質として江戸に赴くなど、その決断力と胆力は「加賀の国母」と称されるにふさわしいものでした。

尾山神社 — 前田利家とまつを祀る金沢のシンボル

尾山神社は前田利家を主祭神とし、正室まつ(芳春院)を合祀する金沢を代表する神社です。1873年(明治6年)の創建で、最大の見どころは和漢洋の三様式を折衷した独特の「神門」です。最上層にはめ込まれたステンドグラスは、かつて日本海を航行する船の灯台代わりにもなったと伝わり、国の重要文化財に指定されています。

境内には利家の銅像やまつの石碑が建ち、加賀百万石の祖を偲ぶ参拝者が絶えません。毎年6月に行われる「百万石まつり」では、利家の金沢城入城を再現した百万石行列が尾山神社から出発し、金沢最大の祭りとして多くの見物客で賑わいます。お守りや御朱印も人気で、特に「勝守」は前田利家の武勇にあやかるお守りとして受験生やビジネスマンに人気です。

金沢城公園 — 前田利家が築いた加賀藩の本拠地

尾山神社の境内と拝殿
前田利家とまつを祀る尾山神社の境内(Photo: MathieuMD / CC BY-SA 4.0)

金沢城公園は、前田利家が1583年に入城して以来、加賀藩前田家14代の居城として約280年間にわたり藩政の中心であり続けた城です。度重なる火災と再建を繰り返した歴史を持ち、現在は菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓などが忠実に復元されています。特に2020年に復元された鼠多門は、利家時代の金沢城の西の玄関口として注目されています。

城内で見逃せないのが、多種多様な石垣です。利家時代の自然石積みから、二代利長・三代利常時代の切石積みまで、時代ごとに異なる技術を比較できる「石垣の博物館」としても知られています。また、三代利常が造営を始めた玉泉院丸庭園は、独特の色彩を持つ石垣を借景とした大名庭園で、夜間にはライトアップされ幻想的な雰囲気を楽しめます。

前田利家とまつゆかりの地をめぐる歴史散歩

金沢市内には前田利家とまつに関連する史跡が数多く点在しています。長町武家屋敷跡は加賀藩の中級武士の屋敷が並んだエリアで、利家が整備した城下町の面影を色濃く残しています。土塀と石畳の通りを歩けば、加賀藩士の暮らしぶりが偲ばれます。野村家の武家屋敷庭園では、藩政時代の武家の美意識を間近に感じることができます。

利家の菩提寺である宝円寺は、利家自身が1583年に創建した曹洞宗の寺院です。利家の木像が安置されており、毎年命日には法要が営まれています。また、まつ(芳春院)の菩提寺は大乗寺で、曹洞宗の名刹として禅の修行道場としても知られています。能登方面では、利家が最初に治めた末森城跡も前田家の歴史を知る上で重要なスポットです。

前田利家とまつゆかりの地 周辺の見どころ

利家とまつゆかりの地を巡る際には、周辺の金沢の名所も併せて楽しみましょう。尾山神社から徒歩すぐの金沢城公園を抜ければ、日本三名園の兼六園へとつながります。兼六園内の成巽閣は13代藩主・前田斉泰が母のために建てた御殿で、前田家の美意識が凝縮された空間です。

金沢神社は前田家ゆかりの学問の神社で、受験シーズンには多くの参拝者が訪れます。前田家の文化政策が育んだ金沢の伝統工芸茶の湯文化も、利家とまつの時代に端を発するものが多く、加賀百万石の文化的遺産として今に受け継がれています。石川県立歴史博物館では、前田家の歴史をより詳しく学ぶことができます。

前田利家とまつゆかりの地へのアクセス情報

前田利家とまつゆかりの主要スポットは金沢市中心部に集まっており、徒歩やバスで効率よく巡ることができます。尾山神社へは金沢駅から城下まち金沢周遊バスで「南町・尾山神社」下車徒歩3分。金沢城公園へは「兼六園下・金沢城」下車すぐです。長町武家屋敷跡へは「香林坊」下車徒歩5分でアクセスできます。

おすすめのモデルコースは、尾山神社(参拝30分)→金沢城公園(散策1時間)→兼六園(散策1時間)→成巽閣(見学30分)→長町武家屋敷跡(散策30分)で、所要時間は約4時間です。尾山神社と金沢城公園は入場無料(金沢城内の一部施設は有料)。毎年6月の百万石まつりの時期は特に混雑しますが、利家の金沢入城を再現した華やかな行列を見ることができる貴重な機会です。駐車場は各施設周辺のコインパーキングを利用してください。


写真クレジット:
尾山神社の神門 — cattan2011(Wikimedia Commons / CC BY 2.0)
金沢城公園の前田利家像 — MathieuMD(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)
尾山神社の境内 — 先従隗始(Wikimedia Commons / CC0)

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