ローカル線の旅③:JR七尾線(後編)— 羽咋から七尾・和倉温泉へ、能登の歴史と温泉を巡る鉄道旅

JR七尾線の旅・後編では、羽咋駅から能登の中心都市・七尾を経て、終点の和倉温泉駅までの区間を紹介します。前編で走り抜けた加賀平野の風景から一転、車窓には能登半島の里山風景が広がり、途中下車したくなる魅力的な駅が続きます。歴史ある城下町・七尾での街歩き、開湯1200年を誇る和倉温泉、そしてJR西日本の観光列車「花嫁のれん」など、鉄道旅の楽しみが凝縮された区間です。

JR七尾線・後半区間(羽咋〜和倉温泉)の概要

JR七尾線の後半区間は、羽咋駅から七尾駅を経て和倉温泉駅に至る約40kmの路線です。羽咋駅を出発すると、列車は能登半島の内陸部を北東へと進みます。沿線には田園風景が広がり、のどかな里山の景色を車窓から楽しめます。七尾駅は能登地方最大の都市・七尾市の玄関口であり、ここから先の和倉温泉駅が七尾線の終点となります。運行本数は1日に十数本で、金沢駅から和倉温泉駅までの所要時間は約1時間40分〜2時間です。

和倉温泉の温泉街と七尾湾の風景
和倉温泉の温泉街と七尾湾(Photo: Totti / CC BY-SA 4.0)

千路駅〜金丸駅 — JR七尾線沿線の能登の田園風景

羽咋駅を出てしばらくすると、千路(ちじ)駅に到着します。このあたりは能登の穀倉地帯で、春には水田に水が張られた美しい鏡面風景、夏には青々とした稲穂の海、秋には黄金色に輝く収穫期の田園と、四季折々の車窓風景が楽しめます。続く能登部駅へ向かう途中の金丸駅周辺は、のどかな集落と田畑が広がる典型的な能登の里山風景です。鉄道旅ならではのゆったりとした時間の中で、都会では味わえない日本の原風景を満喫できるでしょう。

能登部駅 — 能登上布の産地・中能登町のJR七尾線途中下車

能登部駅は中能登町の玄関口です。中能登町は古くから麻織物「能登上布」の産地として知られています。能登上布は石川県の無形文化財に指定された伝統的な織物で、夏の着物や帯の素材として珍重されてきました。中能登町にはこの伝統を伝える「能登上布会館」があり、機織りの実演や資料展示を見学できます。ローカル線の途中下車で、能登に息づく織物文化に触れてみてはいかがでしょうか。中能登町の雨の宮古墳群と能登上布の記事も合わせてご覧ください。

良川駅と雨の宮古墳群 — JR七尾線沿線の古代ロマン

能登部駅の隣、良川(よしかわ)駅は雨の宮古墳群の最寄り駅です。雨の宮古墳群は、眉丈山(びじょうざん)の山頂付近に築かれた36基の古墳からなる国指定史跡で、なかでも1号墳は全長約64mの前方後方墳として北陸最大級の規模を誇ります。古墳時代前期(4世紀頃)に築造されたこれらの古墳は、古代の能登がすでに有力な豪族が治める重要な地域であったことを物語っています。駅から古墳群までは車で約10分の距離で、途中下車して古代能登のロマンに浸るのもおすすめです。

七尾駅 — 能登の中心都市・JR七尾線の主要ターミナル

七尾駅は能登地方最大の都市・七尾市の中心駅であり、JR七尾線の実質的なターミナル駅です。駅前からは七尾市街地が広がり、徒歩圏内に多くの観光スポットが集まっています。

七尾駅の駅舎と駅前広場
七尾駅の駅舎(Photo: Araisyohei / CC BY 4.0)

一本杉通りは、七尾駅から徒歩約10分の場所にある約450mの歴史ある商店街です。600年以上の歴史を持つ通り沿いには、明治〜昭和期の風情ある建物が並び、老舗の昆布海産物店や和ろうそく店、醤油蔵などが今も営業を続けています。毎年5月には「花嫁のれん展」が開催され、加賀藩の婚礼文化である色とりどりの花嫁のれんが通り一帯に飾られます。

花嫁のれん館は、加賀・能登地方に伝わる「花嫁のれん」の文化を紹介する施設です。花嫁のれんとは、婚礼の際に花嫁が嫁ぎ先の仏間に掛けられたのれんをくぐる風習で、加賀藩時代から続く独特の婚礼文化です。館内では色鮮やかな花嫁のれんの展示に加え、実際にのれんをくぐる体験もできます。七尾の街歩きの記事では、花嫁のれん館や一本杉通りの散策情報を詳しく紹介しています。

能登食祭市場は、七尾港に面した観光市場で、能登の新鮮な海鮮グルメを堪能できるスポットです。1階の「能登生鮮市場」では朝獲れの魚介が並び、「能登グルメ館」では海鮮丼や寿司、能登牛のステーキなどを味わえます。七尾駅から徒歩約10分とアクセスも良好で、鉄道旅のランチスポットとして最適です。

七尾城跡は、七尾駅からバスで約15分の場所にある能登畠山氏の居城跡です。標高約300mの山上に築かれた山城で、日本100名城にも選定されています。本丸跡からは七尾湾と能登島を一望する大パノラマが広がり、能登半島有数の絶景スポットとしても知られています。戦国時代には上杉謙信の軍勢に攻め落とされた歴史があり、城跡には当時の石垣が残っています。

和倉温泉駅 — 開湯1200年の名湯とJR七尾線の終点

七尾駅から2駅先の和倉温泉駅が、JR七尾線の終着駅です。和倉温泉は、七尾湾を望む海沿いに広がる北陸を代表する温泉地で、開湯から約1200年の歴史を持ちます。海中から湧き出る高温の塩化物泉は、肌に優しい「美肌の湯」として評判で、日帰り入浴施設「総湯」では気軽に名湯を楽しめます。温泉街には老舗旅館が立ち並び、能登の海の幸を使った料理と温泉をセットで堪能できるのが魅力です。駅から温泉街までは徒歩約15分ですが、路線バスも運行しています。

また、和倉温泉駅はのと鉄道七尾線への乗り換え駅でもあります。のと鉄道は七尾駅を起点に和倉温泉駅を経由して穴水駅まで結ぶローカル線で、七尾湾の海岸線に沿って走る車窓風景は絶景です。能登半島の奥へと旅を続ける方は、ここでのと鉄道に乗り換えて穴水方面へ向かうことができます。

JR七尾線の観光列車「花嫁のれん」で楽しむ鉄道旅

JR七尾線では、JR西日本が運行する観光列車「花嫁のれん」に乗車することができます。金沢駅と和倉温泉駅を結ぶこの列車は、加賀・能登の伝統文化をテーマにした豪華な車両が特徴です。外装には加賀友禅をイメージした華やかな花模様が描かれ、車内は輪島塗や加賀水引など石川の伝統工芸をふんだんに取り入れた和の空間が広がります。

1号車は半個室のゆったりとしたコンパートメント席、2号車はオープンスペースの座席で、いずれも全席指定です。車内では沿線の食材を使ったスイーツセットや軽食を楽しむことができ、アテンダントによる沿線の観光案内も行われます。通常の列車では約2時間の区間を、花嫁のれんは約1時間30分で走破します。週末を中心に1日2往復の運行で、乗車には特急券と指定席券が必要です。鉄道旅の特別な思い出として、ぜひ花嫁のれんに乗車してみてください。

七尾駅発の観光モデルコース — JR七尾線途中下車の旅

JR七尾線で七尾を訪れたら、駅を拠点に半日〜1日で周遊できるモデルコースがおすすめです。

半日コース(約3〜4時間)
七尾駅→(徒歩10分)→一本杉通り散策→花嫁のれん館見学→(徒歩10分)→能登食祭市場でランチ→七尾駅

1日コース(約6〜7時間)
七尾駅→(徒歩10分)→一本杉通り散策→花嫁のれん館見学→(徒歩10分)→能登食祭市場でランチ→(バス15分)→七尾城跡から七尾湾の絶景を一望→(バス15分)→七尾駅→(JR七尾線5分)→和倉温泉駅→和倉温泉の総湯で日帰り入浴

七尾は徒歩圏内にコンパクトに見どころが集まっているため、鉄道旅の途中下車にぴったりの街です。時間に余裕があれば、和倉温泉まで足を延ばして温泉に浸かり、能登の海鮮グルメを味わってから帰路につくのがおすすめです。

のと鉄道への乗り継ぎ案内 — JR七尾線から能登の奥へ

JR七尾線の旅を終え、さらに能登半島の奥へ向かう方には、のと鉄道への乗り継ぎがおすすめです。のと鉄道七尾線は七尾駅から穴水駅までの約33kmを結ぶローカル線で、和倉温泉駅で乗り換えが可能です(一部列車は七尾駅始発)。

のと鉄道の車窓からは、七尾湾の穏やかな海と能登島の風景が広がります。特に能登中島駅〜穴水駅間は海岸線ギリギリを走る区間があり、まるで海の上を走っているかのような絶景が楽しめます。のと鉄道でも観光列車「のと里山里海号」が運行されており、能登の里山里海の風景をゆったりと楽しめます。穴水駅からは路線バスで輪島や珠洲方面へのアクセスも可能で、JR七尾線と組み合わせることで金沢から奥能登への鉄道旅が実現します。

JR七尾線(後編)のアクセスと運行情報

JR七尾線の後半区間へのアクセスは金沢駅が起点となります。金沢駅からは普通列車で七尾駅まで約1時間30分〜1時間50分、和倉温泉駅まで約1時間40分〜2時間です。観光列車「花嫁のれん」を利用すれば、金沢駅から和倉温泉駅まで約1時間30分で到着します。

運行本数は羽咋〜七尾間で1日約14本、七尾〜和倉温泉間で1日約10本程度です。特に七尾以北は本数が少なくなるため、事前に時刻表を確認して計画を立てましょう。ICカードは利用できないため、きっぷを購入するか、交通系ICカード対応の切符売り場を利用してください。金沢駅からの運賃は七尾駅まで約1,250円、和倉温泉駅まで約1,300円です。ローカル線の鉄道旅を楽しむなら、北陸エリアのフリーきっぷの活用も検討してみてください。

JR七尾線(後編)で巡る能登の歴史と温泉の鉄道旅

JR七尾線の後半区間は、能登の田園風景から歴史ある城下町、そして北陸屈指の温泉地へと変化に富んだ車窓風景が楽しめる魅力的な路線です。途中下車して中能登の織物文化や古墳群に触れ、七尾で城下町の歴史と海鮮グルメを満喫し、和倉温泉で名湯に浸かる——そんな贅沢な鉄道旅が、JR七尾線では気軽に実現します。観光列車「花嫁のれん」に乗れば、移動そのものが特別な体験になります。金沢から日帰りでも、1泊2日の旅でも楽しめるJR七尾線の後半区間を、ぜひローカル線の旅で訪れてみてください。

写真クレジット:
七尾駅の駅舎 — Araisyohei(Wikimedia Commons / CC BY 4.0)
和倉温泉の温泉街 — Totti(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)

\ 最新情報をチェック /

楽天トラベルで旅行プランを探す