のと鉄道の旅 — 七尾湾の絶景を車窓に楽しむ能登半島のローカル線

のと鉄道は、石川県七尾市の七尾駅から鳳珠郡穴水町の穴水駅までを結ぶ、全長33.1kmのローカル線です。七尾湾に沿って走る車窓からは、穏やかな内海の風景と能登の里山が織りなす美しい景色が広がります。観光列車「のと里山里海号」も運行され、能登半島の魅力を五感で楽しめるローカル線として、鉄道ファンのみならず多くの観光客に愛されています。
かつて能登半島には、穴水から輪島へ向かう路線や、珠洲方面へ延びる路線もありましたが、利用者の減少により順次廃止されました。現在は七尾〜穴水間の七尾線のみが残り、能登半島唯一の鉄道路線として地域の足を支えています。JR七尾線と直通運転を行い、金沢方面からのアクセスも便利です。
のと鉄道の路線と歴史
のと鉄道は、1991年にJR西日本から能登線(穴水〜蛸島間)を引き継ぐ形で開業した第三セクター鉄道です。2005年には能登線(穴水〜蛸島間、61.0km)が廃止され、さらに2001年には七尾線の穴水〜輪島間も廃止されました。現在は七尾〜穴水間の七尾線のみを運行しています。
路線の歴史を遡ると、七尾〜穴水間は1925年(大正14年)に国鉄七尾線の一部として開通しました。約100年にわたって能登半島の交通を支えてきた歴史ある路線です。2024年1月の能登半島地震では大きな被害を受けましたが、復旧工事を経て運行を再開し、地域の復興を象徴する存在となっています。
のと鉄道の主力車両はNT200形気動車です。青を基調としたカラーリングの単行ディーゼルカーで、車窓を楽しみやすい大きな窓が特徴です。ワンマン運転で、全線非電化のためディーゼルエンジンの心地よい振動を感じながらの旅が楽しめます。
のと鉄道の車窓風景と絶景ポイント
のと鉄道の最大の魅力は、七尾湾沿いを走る美しい車窓風景です。進行方向右側の座席に座ると、穏やかな七尾湾の景色をたっぷりと楽しめます。季節によって表情を変える車窓は、何度乗っても飽きることがありません。
能登中島駅は、のと鉄道の途中駅の中でも特に注目のスポットです。駅構内には郵便車(オユ10形)が保存展示されており、鉄道ファンの人気を集めています。また、能登中島は「能登演劇堂」がある演劇の里としても知られ、仲代達矢率いる無名塾の公演が行われることでも有名です。
西岸駅は、アニメ「花咲くいろは」の舞台のモデルとなった駅として聖地巡礼の地となっています。木造駅舎のレトロな雰囲気が魅力で、駅周辺の穏やかな漁村風景とともに写真撮影のスポットとして人気です。
能登鹿島駅は「能登さくら駅」の愛称で親しまれ、春には駅のホーム沿いに植えられた桜のトンネルが満開になる絶景スポットです。桜と列車を一緒に撮影できるフォトジェニックな駅として、全国の鉄道ファンや写真愛好家が訪れます。
笠師保駅〜能登中島駅間では、七尾湾に浮かぶ能登島を望む開放的な車窓が広がります。特に夕方の時間帯は、海面に夕日が反射する美しい光景を車窓から楽しめます。和倉温泉に宿泊して朝夕の列車に乗ると、時間帯による景色の変化を体験できるのでおすすめです。
のと鉄道の観光列車「のと里山里海号」

「のと里山里海号」は、のと鉄道が運行する観光列車です。七尾駅〜穴水駅間を約1時間かけてゆっくりと走り、沿線の絶景ポイントでは一時停車して車窓風景を楽しむ時間が設けられています。アテンダントが乗車し、沿線の見どころや歴史を解説してくれるので、能登の文化や自然への理解が深まります。
観光列車には「カジュアルコース」と「スイーツコース」「ほろ酔いコース」などの特別プランがあり、能登の食材を使ったスイーツや地酒を車内で楽しめます。車内は能登の伝統工芸品で装飾された特別仕様で、輪島塗のカウンターや能登ヒバを使った内装が旅の特別感を演出します。
運行は主に土日祝日を中心に1日2〜3往復で、全席指定の予約制です。乗車整理券(500円程度)が別途必要となります。公式サイトまたは電話での事前予約がおすすめです。特に桜の季節(4月)や紅葉の季節(11月)は人気が高く、早めの予約が必要です。
のと鉄道の各駅と沿線の見どころ
のと鉄道七尾線には、七尾駅を含めて8つの駅があります。各駅周辺の見どころとあわせてご紹介します。
七尾駅はJR七尾線との接続駅で、のと鉄道の旅の起点です。七尾の街の観光拠点として、一本杉通りや花嫁のれん館、食祭市場などが徒歩圏内にあります。和倉温泉駅は和倉温泉の最寄り駅で、北陸有数の温泉街への玄関口です。
田鶴浜駅は建具の町として知られる田鶴浜の玄関口。笠師保駅からは七尾湾越しに能登島が見えます。前述の能登中島駅、西岸駅、能登鹿島駅を経て、終着駅の穴水駅に到着します。
穴水町は「まいもんまつり」で知られるグルメの町で、冬の牡蠣まつりは特に人気があります。穴水駅にはのと鉄道の本社もあり、駅舎内のカフェで能登の食材を使った軽食を楽しめます。ボラ待ちやぐらや能登ワインなど、穴水ならではの見どころもあります。
のと鉄道の運賃・時刻表・アクセス情報
運賃は七尾駅〜穴水駅間の全線で大人860円(片道)です。途中駅からの乗車も可能で、区間ごとの運賃が設定されています。一日乗車券は大人1,500円で、全区間が乗り放題となるため、途中下車の旅を楽しむならお得です。
運行本数は、1日約12〜14往復(2024年現在)で、概ね1時間に1本程度の間隔で運行されています。朝夕の通勤通学時間帯はやや多く、日中は1〜2時間間隔となります。全線の所要時間は約40分です。
金沢からのアクセスは、JR七尾線で金沢駅から七尾駅まで約1時間40分〜2時間。七尾駅で同じホームからのと鉄道に乗り換えられます。一部の特急列車は和倉温泉駅まで直通運転しています。能登半島ドライブと組み合わせて、片道は鉄道、片道は車というプランも楽しめます。
のと鉄道は、能登半島の穏やかな風景を車窓から楽しめるかけがえのないローカル線です。七尾湾の海景色、桜のトンネル、里山の四季——列車の揺れに身を委ねながら、能登の自然と人々の暮らしに寄り添う鉄道旅をぜひ体験してみてください。
写真クレジット:
のと鉄道NT200形車両 — Rsa(Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0)
終着駅・穴水駅に停車するのと鉄道 — Kazutoko(Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0)








