粟津温泉 — 開湯1,300年・北陸最古の湯と恋人の聖地おっしょべ祭り

石川県小松市にある粟津温泉(あわづおんせん)は、養老2年(718年)に泰澄大師が白山開山の折に発見したと伝わる、開湯1,300年を超える北陸最古級の温泉地です。各旅館がそれぞれ自家源泉を持つという全国的にも珍しい温泉地で、ナトリウム硫酸塩・塩化物泉のやわらかな湯は「美肌の湯」として親しまれています。恋人たちの伝説が残る「おっしょべ祭り」でも知られ、静かな里山の風情の中で心と体を癒す温泉旅をお楽しみください。

粟津温泉の歴史 — 泰澄大師が発見した北陸最古の湯

粟津温泉の老舗旅館・法師の外観
粟津温泉の老舗旅館「法師」。開業から1,300年以上の歴史を持つ(Photo: Opqr / CC BY-SA 3.0)

粟津温泉の開湯は養老2年(718年)。白山を開山した泰澄大師が、白山五院のひとつ「大王寺」を建立した際、薬師如来のお告げにより温泉を発見したと伝えられています。以来1,300年以上にわたって湯が湧き続け、北陸最古の温泉として多くの人々に愛されてきました。加賀藩の時代には藩主の湯治場としても利用され、明治以降は文人墨客も多く訪れました。松尾芭蕉も「奥の細道」の旅で近くの那谷寺を訪れており、粟津温泉もまた加賀の歴史と深く結びついた温泉です。

粟津温泉の泉質と各旅館の自家源泉

明治時代の粟津温泉の風景
明治時代の粟津温泉。古くから北陸の湯治場として親しまれてきた(Photo: 田山宗尭 / Public domain)

粟津温泉の大きな特徴は、各旅館がそれぞれ独自の源泉を持っていることです。これは全国的にも非常に珍しく、宿ごとに微妙に異なる泉質や湯の個性を楽しめます。泉質は主にナトリウム硫酸塩・塩化物泉で、無色透明のなめらかな湯が特徴。肌にやさしく保湿効果が高いことから「美肌の湯」と称されています。源泉温度は約45〜50度と適温で、神経痛、筋肉痛、関節痛、冷え性などに効能があるとされます。共同浴場「粟津温泉総湯」では、気軽に地元の湯を堪能できます。

粟津温泉のおっしょべ祭り — 恋人の聖地としての伝説

毎年8月に開催される「おっしょべ祭り」は、粟津温泉を代表する祭りです。江戸時代、粟津温泉の旅館で働いていた男女の奉公人が恋に落ち、「おっしょべ(押しょべ=押してよ)」と囁き合いながら夜の温泉街を逢瀬を重ねたという恋物語が由来です。祭りでは、参加者が「おっしょべおっしょべ」の掛け声とともに温泉街を踊り歩き、カップルや夫婦が仲睦まじく参加する姿が見られます。この伝説にちなみ、粟津温泉は「恋人の聖地」としても知られ、縁結びのパワースポットとして若い世代にも人気を集めています。

粟津温泉と那谷寺を巡る加賀の旅

粟津温泉を訪れるなら、ぜひ組み合わせたいのが車で約15分の那谷寺です。奇岩遊仙境と呼ばれる白い岩壁と、秋の紅葉で知られる那谷寺は、松尾芭蕉が「石山の石より白し秋の風」と詠んだ名刹。粟津温泉で一泊し、翌日に那谷寺を参拝するプランは加賀観光の定番です。また、加賀温泉郷の山代温泉・山中温泉・片山津温泉へもアクセスしやすく、温泉のはしごを楽しむこともできます。粟津温泉は大型観光地とは異なる、静かで落ち着いた雰囲気が魅力。日常の喧騒を離れ、ゆっくりと湯に浸かる贅沢な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

粟津温泉へのアクセス・駐車場情報

粟津温泉へは、JR粟津駅からタクシーで約10分、またはJR小松駅からバスで約25分です。北陸新幹線の小松駅開業により、東京方面からのアクセスも格段に向上しました。車の場合は北陸自動車道 加賀ICまたは小松ICから約20分。温泉街には各旅館の駐車場があるほか、総湯周辺にも無料駐車場があります。温泉街はコンパクトにまとまっているため、浴衣姿でそぞろ歩きを楽しむのもおすすめです。

粟津温泉周辺の見どころ

粟津温泉周辺には見どころが点在しています。温泉街から車で約10分の日用苔の里は、約50種類の苔が自生する美しい苔庭で、近年注目を集めるスポットです。また、小松市街には航空プラザ(実機の航空機を展示する博物館)や安宅関跡(歌舞伎「勧進帳」の舞台)などがあり、家族連れでも楽しめます。加賀温泉郷を起点に、粟津温泉から那谷寺、さらに山中温泉のこおろぎ橋や鶴仙渓へと足を延ばす加賀周遊の旅がおすすめです。


写真クレジット:
粟津温泉総湯 — Opqr(Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0)
法師旅館 — Namazu-tron(Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0)
明治時代の粟津温泉 — 田山宗尭(Wikimedia Commons / Public domain)

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