大聖寺と九谷焼の里 — 加賀藩支藩十万石の城下町と古九谷発祥の地

石川県加賀市の大聖寺(だいしょうじ)は、加賀藩の支藩・大聖寺藩十万石の城下町として栄えた歴史ある街です。九谷焼発祥の地としても知られ、古九谷の窯跡から現代の窯元まで、色絵磁器の伝統が息づいています。武家屋敷の面影が残る町並み、江沼神社の庭園、山ノ下寺院群など、十万石の城下町の風情を今に伝える大聖寺の魅力をご紹介します。

大聖寺の歴史 — 加賀藩支藩・大聖寺藩十万石の城下町

大聖寺藩は、1639年(寛永16年)に加賀藩三代藩主・前田利常の三男・前田利治が七万石(後に十万石)を分封されて成立しました。加賀百万石の支藩として、独自の文化を育みながら明治維新まで14代にわたって続きました。大聖寺は北陸道の要衝に位置し、城下町として整備された町割りが現在も残っています。

大聖寺藩は文化面で特に力を注いだ藩として知られています。九谷焼の振興はもちろん、茶道・華道・能楽などの伝統文化が盛んに行われ、「小京都」とも呼ばれる雅な雰囲気を持つ城下町でした。現在も大聖寺の町を歩くと、武家屋敷の土塀や用水路、寺院群など、城下町の面影を随所に感じることができます。

九谷焼吉田屋窯の芭蕉葉文皿・大聖寺の九谷焼の伝統
九谷焼吉田屋窯の芭蕉葉文皿 — 大聖寺で生まれた色絵磁器の伝統(Photo: Cleveland Museum of Art / CC0)

大聖寺と九谷焼の発祥 — 古九谷から現代の窯元へ

九谷焼は、1655年(明暦元年)頃に大聖寺藩の領内で焼かれ始めたとされています。藩の命を受けた後藤才次郎が、九谷村(現在の加賀市山中温泉九谷町)に窯を開いたのが始まりです。この初期の九谷焼は「古九谷」と呼ばれ、大胆な構図と九谷五彩(緑・黄・紫・紺青・赤)の鮮やかな色使いが特徴です。しかし古九谷の窯は約50年で突然閉じられ、その理由は現在も謎に包まれています。

九谷焼窯跡展示館は、江戸時代に再興された「吉田屋窯」の窯跡を保存・公開する施設です。実際の登り窯の遺構を間近に見ることができ、九谷焼の製造工程や歴史を学べます。絵付け体験も人気で、自分だけの九谷焼を作ることができます。大聖寺周辺には現代の窯元も点在しており、窯元めぐりで作家の工房を訪ね、直接作品を購入することもできます。金沢の伝統工芸めぐりと合わせて、石川の工芸文化を堪能してください。

大聖寺の江沼神社と旧大聖寺藩邸庭園

江沼神社は大聖寺藩の藩祖・前田利治を祀る神社で、境内には旧大聖寺藩邸の庭園「旧大聖寺藩邸庭園(長流亭庭園)」が残っています。この庭園は回遊式庭園で、池泉を中心に石組みや植栽が配された優美な空間です。特に長流亭は、大聖寺川を借景に取り入れた数寄屋造りの建物で、国の重要文化財に指定されています。

大聖寺川沿いの桜並木も大聖寺の名所の一つです。春には約1kmにわたって桜が咲き誇り、川面に映る桜の風景は「加賀の小京都」の名にふさわしい美しさです。4月には「大聖寺桜まつり」が開催され、夜桜のライトアップや川下りを楽しめます。

大聖寺川の風景と城下町の面影
大聖寺川 — 春には桜並木が城下町を彩る(Photo: Cleveland Museum of Art / CC0)

大聖寺の山ノ下寺院群と城下町散策

大聖寺の南側に位置する山ノ下寺院群は、大聖寺藩が城下町の防衛を兼ねて寺院を集めた寺町です。約20もの寺院が軒を連ね、静かな佇まいの中を散策できます。各寺院にはそれぞれ見どころがあり、庭園や仏像、歴史的な建造物など、ゆっくりと巡る価値があります。

大聖寺の城下町は徒歩で巡ることができるコンパクトな規模です。おすすめの散策ルートは、大聖寺駅から江沼神社・長流亭を訪れ、大聖寺川沿いを歩いて山ノ下寺院群を巡り、九谷焼窯跡展示館へ向かうコースです。所要時間は約2~3時間。途中、町家を改装したカフェやギャラリーに立ち寄るのも楽しみの一つです。

大聖寺へのアクセスと周辺の見どころ

大聖寺へは、北陸新幹線の加賀温泉駅からIRいしかわ鉄道で約5分、大聖寺駅で下車です。車の場合は北陸自動車道の加賀ICから約5分。駐車場は江沼神社や九谷焼窯跡展示館にあります。

大聖寺周辺には魅力的なスポットが数多くあります。加賀温泉郷は車で約15分、山代温泉・山中温泉・片山津温泉の三温泉でゆったりと旅の疲れを癒せます。九谷焼の本場をめぐる窯元巡りや、金沢の伝統工芸めぐりと組み合わせて、石川県の工芸文化を深く楽しむ旅がおすすめです。十万石の城下町が育んだ文化と、九谷焼の鮮やかな色彩の世界をぜひ体感してください。


写真クレジット:
大聖寺駅の外観 — SONIC BLOOMING(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)
九谷焼吉田屋窯の芭蕉葉文皿 — Cleveland Museum of Art(Wikimedia Commons / CC0)
大聖寺川の風景 — Bakkai(Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0)

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