金沢の近代建築めぐり — 旧四高・しいのき迎賓館・国立工芸館
金沢は戦災を免れた街として知られ、明治から昭和初期にかけて建てられた近代建築が数多く現存しています。旧四高の赤レンガ校舎、しいのき迎賓館、国立工芸館など、歴史的建造物がリノベーションされて現代に活用されている姿は、金沢ならではの魅力です。兼六園周辺エリアを中心に、近代建築をめぐる散策は、加賀百万石の城下町とは異なる金沢のもうひとつの顔を発見する旅になるでしょう。
目次
金沢の近代建築が残る理由 — 戦災を免れた街の遺産
金沢には明治・大正・昭和初期の近代建築が多数現存していますが、これは第二次世界大戦で空襲を受けなかったことが大きな要因です。日本の主要都市の多くが空襲で焼失したのに対し、金沢は城下町の街並みとともに近代建築も無傷で残りました。これにより、江戸時代の武家屋敷から明治のレンガ造り、大正ロマンの洋館まで、各時代の建築が共存する稀有な景観が形成されています。
金沢市は「歴史都市」として、これらの近代建築を積極的に保存・活用しています。多くの建物がリノベーションされ、博物館・文化施設・カフェなどとして新たな命を吹き込まれています。国の重要文化財や登録有形文化財に指定された建物も数多く、建築ファンにとっては見逃せないスポットの宝庫です。
旧四高記念文化交流館 — 明治の赤レンガ校舎を活用した文化施設

旧四高記念文化交流館は、1891年(明治24年)に建てられた旧制第四高等学校の校舎を活用した文化施設です。赤レンガのルネサンス様式の建物は国の重要文化財に指定されており、金沢の近代建築を代表する存在です。現在は石川近代文学館と石川四高記念文化交流館として利用されており、泉鏡花・徳田秋聲・室生犀星ら金沢三文豪の資料も展示されています。
建物の外観は赤レンガと白い石のコントラストが美しく、正面の車寄せやアーチ窓など、明治の洋風建築の意匠がよく残されています。内部は木造の階段や廊下が当時の雰囲気を伝え、高い天井と大きな窓から差し込む光が心地よい空間を作り出しています。香林坊から兼六園へ向かう途中に位置しており、金沢観光のルートに組み込みやすい立地です。入館無料のエリアもあり、気軽に立ち寄ることができます。
しいのき迎賓館 — 大正ロマンの県庁舎が生まれ変わった文化施設
しいのき迎賓館(石川県政記念しいのき迎賓館)は、1924年(大正13年)に建てられた旧石川県庁舎を保存・改修した施設です。設計は旧東京帝国大学出身の建築家・矢橋賢吉で、正面のネオクラシカルな意匠が特徴的です。2010年のリノベーションでは、歴史的な正面ファサードをそのまま残しつつ、背面をガラス張りの現代的なデザインに改修するという大胆な手法が採られました。
建物の前には樹齢300年を超える国の天然記念物のシイノキが2本立ち、建物名の由来となっています。館内にはギャラリー、レストラン、カフェが入り、金沢城の石垣を間近に望むテラス席は特に人気です。夜間のライトアップも美しく、金沢城の石垣とともに幻想的な夜景を演出します。入館無料で、金沢観光の休憩スポットとしても最適です。
国立工芸館 — 金沢に移転した旧陸軍の近代建築

国立工芸館(東京国立近代美術館工芸館)は、2020年に東京から金沢に移転開館した日本唯一の国立の工芸専門美術館です。建物は旧陸軍第九師団司令部庁舎と旧陸軍金沢偕行社の二つの近代建築を移築・復元して活用しています。いずれも明治時代に建てられた洋風建築で、国の登録有形文化財に指定されています。
旧司令部庁舎は1898年(明治31年)築の木造二階建てで、白壁と赤い屋根のコントラストが優美です。旧偕行社は将校クラブとして使われた建物で、洋風の室内装飾が見どころです。館内では陶磁器・漆工・金工・染織など日本の工芸作品を幅広く展示しており、金沢の伝統工芸との関連も深い内容です。兼六園から徒歩約10分の本多の森エリアに位置し、石川県立美術館や石川県立歴史博物館と合わせて訪れるのがおすすめです。入館料は一般300円。
金沢の近代建築めぐり周辺の見どころ
金沢の近代建築は、兼六園・金沢城周辺エリアに集中しています。石川県立歴史博物館は旧陸軍兵器庫の赤レンガ棟を活用した博物館で、三棟が並ぶ姿は圧巻です。国の重要文化財に指定されています。金沢21世紀美術館は近代建築ではなく現代建築ですが、SANAAによる円形のガラス建築は世界的に評価されており、新旧の建築を比較するのも面白い体験です。
兼六園や金沢城公園はもちろん、鈴木大拙館の谷口吉生による現代建築も見逃せません。また、ひがし茶屋街には大正時代のモダン建築を改装した喫茶店があり、近代建築めぐりの締めくくりにふさわしい空間です。金沢駅の鼓門自体も、現代建築と伝統工芸が融合した傑作です。
金沢の近代建築めぐりのアクセス・モデルコース
金沢の近代建築は広坂・本多町エリアに集中しているため、徒歩で効率よく巡ることができます。おすすめのモデルコースは、しいのき迎賓館→旧四高記念文化交流館→金沢21世紀美術館→石川県立美術館→石川県立歴史博物館(赤レンガ棟)→国立工芸館で、所要時間は約3〜4時間です。
金沢駅からは城下まち金沢周遊バスで「香林坊」または「広坂・21世紀美術館」下車すぐです。各施設の開館時間は概ね9:00〜17:00で、月曜日が休館(祝日の場合は翌日)のところが多いです。しいのき迎賓館は入館無料、旧四高記念文化交流館は展示により異なります。石川県立歴史博物館は一般300円、国立工芸館は一般300円です。建物の外観だけなら無料で楽しめるスポットばかりなので、街歩きの途中に気軽に近代建築を鑑賞できるのも金沢ならではの魅力です。
写真クレジット:
しいのき迎賓館の外観 — そらみみ(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)
旧四高記念文化交流館(石川近代文学館)— alonfloc(Wikimedia Commons / CC BY 3.0)
国立工芸館の外観 — J o(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)








