ローカル線の旅②:JR七尾線(前編)— 金沢から宝達・羽咋へ、能登路の入口を訪ねる鉄道旅
北陸の玄関口・金沢駅から日本海側を北上し、能登半島の入口へと向かうJR七尾線。全長98.8kmの路線のうち、今回は前編として金沢駅から羽咋駅までの区間を、途中下車しながら巡る鉄道旅をご紹介します。車窓に広がる加賀平野の田園風景、歴史ある宿場町、そして日本で唯一車で走れる砂浜・千里浜なぎさドライブウェイ。ローカル線ならではのゆったりとした時間の流れに身を任せて、能登路の入口を訪ねてみましょう。


目次
JR七尾線の概要 — 金沢から能登を結ぶ幹線ローカル線
JR七尾線は、石川県の金沢駅から七尾駅を経て和倉温泉駅までを結ぶ全長98.8kmの鉄道路線です。かつては輪島や珠洲まで鉄路が延びていましたが、現在はのと鉄道に一部区間が移管され、JRとしての運行は和倉温泉駅までとなっています。今回の前編では、金沢駅から羽咋駅までの約50分の区間にスポットを当てます。この区間は加賀平野から能登半島の付け根へと地形が移り変わるエリアで、車窓の風景も平野の水田地帯から里山の丘陵地へとダイナミックに変化します。運行本数は1時間に1〜2本で、都市部の路線と比べるとのんびりしたダイヤですが、だからこそ途中下車を楽しむローカル線の旅にぴったりです。
JR七尾線の歴史 — 明治から続く能登への鉄路
七尾線の歴史は1898年(明治31年)に七尾鉄道として津幡〜七尾間が開業したことに始まります。当時は能登地方の物産を金沢・大阪方面へ運ぶ重要な輸送路として建設されました。その後、国有化を経てJR西日本に継承され、現在に至っています。かつては七尾から先、穴水・輪島方面や珠洲方面へも国鉄路線が延びていましたが、利用者減少により段階的に廃止・転換され、七尾〜穴水間はのと鉄道として存続、輪島線と能登線は廃線となりました。2021年には老朽化した国鉄型車両に代わって新型車両521系100番台が導入され、車両は近代化されましたが、沿線の風景や駅舎には今も昭和の面影が色濃く残っています。能登の鉄道の歴史を感じながら乗る七尾線は、単なる移動手段を超えた旅の体験を提供してくれます。
JR七尾線の主要駅と沿線の見どころ(金沢〜羽咋)
金沢駅 — 北陸の玄関口から能登路の旅へ出発
七尾線の旅の起点となる金沢駅は、北陸新幹線と在来線が交わる北陸最大のターミナル駅です。東口に構える巨大な鼓門(つづみもん)は金沢のシンボルとして広く知られ、「世界で最も美しい駅」のひとつにも選ばれました。七尾線の列車は在来線ホームから発着し、2両編成または4両編成のワンマン電車が能登方面へ向かいます。金沢駅周辺で旅の準備を整えたら、いよいよ能登路への鉄道旅のスタートです。駅弁やお茶を買い込んで、車窓の旅を楽しむ準備をしましょう。
津幡駅 — 倶利伽羅峠と宿場町の歴史が交差する要衝
金沢駅から七尾線の列車に乗ること約15分、最初の注目駅は津幡駅です。津幡町はかつて北陸道の宿場町として栄え、加賀と能登の分岐点に位置する交通の要衝でした。駅の近くには、源平合戦の舞台として知られる倶利伽羅峠があります。1183年、木曾義仲が平維盛率いる平家の大軍を牛の角に松明をつけて追い落とした「火牛の計」の伝説で知られるこの古戦場は、駅からバスまたはタクシーでアクセスできます。倶利伽羅不動寺や峠道のハイキングコースも整備されており、歴史好きなら途中下車する価値があるスポットです。七尾線はこの津幡駅でIRいしかわ鉄道(旧北陸本線)から分岐し、いよいよ能登半島方面へと進路を北にとります。
宝達駅 — 能登最高峰・宝達山への入口
津幡駅から約25分、電車は宝達志水町へと入り、宝達駅に到着します。この小さな駅は、能登半島の最高峰・宝達山(標高637m)への登山口として知られています。宝達山は標高こそ高くないものの、山頂からは日本海と能登半島、晴れた日には立山連峰まで見渡せる360度のパノラマが広がります。山頂付近まで車道が通じているため、駅からタクシーを利用すれば気軽に訪れることもできますが、登山道を歩いて登れば約2時間のハイキングが楽しめます。春のブナ新緑、秋の紅葉など、四季それぞれの美しさがあり、能登の里山風景を存分に味わえるスポットです。宝達志水町は「千里浜なぎさドライブウェイ」の南側入口にも近く、砂浜ドライブと山のハイキングを組み合わせたプランもおすすめです。
羽咋駅 — 千里浜なぎさドライブウェイとコスモアイル羽咋の町
金沢駅から約50分、今回の前編の目的地である羽咋駅に到着します。羽咋市は「UFOのまち」として全国的に知られるユニークな町。その由来は、古事記に登場する「怪鳥を退治した」という伝説と、実際に多くのUFO目撃情報が報告されていることにあります。駅から徒歩約10分のコスモアイル羽咋(宇宙科学博物館)には、NASAから無償貸与された本物の宇宙カプセルやロケットが展示されており、宇宙好きはもちろん、お子様連れにも大人気のスポットです。
そして羽咋最大の見どころが、日本で唯一車で走れる砂浜として有名な千里浜なぎさドライブウェイです。全長約8kmの砂浜を波打ち際に沿って車やバスで走る体験は、まさに能登ならではの感動。羽咋駅からは路線バスまたはレンタサイクルでアクセスできます。砂浜に車のタイヤ跡が残る不思議な光景は、鉄道旅の途中下車スポットとして最高の思い出になるでしょう。
JR七尾線の車窓風景 — 田園・里山・日本海の三重奏
七尾線の魅力のひとつが、刻々と移り変わる車窓風景です。金沢駅を出発して津幡あたりまでは、加賀平野の広大な水田地帯が車窓いっぱいに広がります。春は田植え前の水鏡、夏は青々とした稲穂の海、秋は黄金色に輝く収穫期の風景、冬は雪化粧した田んぼと、四季それぞれに異なる美しさを見せてくれます。
津幡を過ぎて能登路に入ると、車窓は里山の丘陵地帯へと変化します。低い山々の間を縫うように走る電車からは、棚田や雑木林、点在する集落など、能登の原風景ともいえるのどかな景色が楽しめます。宝達駅を過ぎると、天気の良い日には進行方向右側の車窓から日本海がちらりと見えることも。羽咋に近づくにつれ、能登半島特有の穏やかな海岸線と里山が織りなす風景が広がり、旅情がいっそう深まります。
JR七尾線で巡る沿線観光モデルコース(金沢〜羽咋)
七尾線の金沢〜羽咋区間を使った1日観光モデルコースをご提案します。途中下車を楽しみながら、能登の入口を満喫するプランです。
午前:金沢駅→羽咋駅→千里浜なぎさドライブウェイ
金沢駅から七尾線に乗車し、約50分で羽咋駅へ。駅前のレンタサイクルまたは路線バスで千里浜なぎさドライブウェイへ向かいます。砂浜の散策と海岸の絶景を楽しんだ後、駅周辺に戻ってコスモアイル羽咋を見学。宇宙にまつわる展示をじっくり楽しめます。羽咋市内でお昼ごはんをいただきましょう。地元の海鮮や能登牛のグルメが味わえるお店があります。
午後:羽咋駅→宝達駅→宝達山ハイキング
羽咋駅から七尾線で約15分、宝達駅で途中下車して宝達山のハイキングへ。山頂からの能登半島と日本海のパノラマを堪能した後、宝達駅に戻って金沢行きの列車に乗車。車窓に流れる夕暮れの田園風景を眺めながら、約40分で金沢駅に帰着します。
このモデルコースは1日で無理なく回れるプランですが、宝達山ハイキングを省略すれば半日コースとしてもアレンジ可能です。七尾線は運行本数が限られるため、事前に時刻表を確認して計画を立てることをおすすめします。
JR七尾線の運行情報・運賃・アクセス
七尾線の金沢〜羽咋間の所要時間は約50分で、運行本数は1時間に1〜2本です。朝夕の通勤・通学時間帯はやや本数が多くなりますが、日中は1時間に1本程度となるため、途中下車する場合は帰りの列車の時刻を事前にチェックしておきましょう。運賃は金沢〜羽咋間で大人片道860円程度です。
七尾線ではICOCAなどの交通系ICカードが利用可能です。また、北陸エリアのお得なきっぷとして「北陸おでかけtabiwaパス」などの企画乗車券が発売されることがあるので、旅行前にJR西日本の公式サイトで確認するとよいでしょう。金沢駅での乗り場は在来線ホームで、北陸新幹線からの乗り換えも改札内で可能です。
JR七尾線沿線(金沢〜羽咋)の周辺の見どころ
七尾線の金沢〜羽咋区間の沿線には、鉄道旅と合わせて訪れたいスポットが点在しています。羽咋市の千里浜なぎさドライブウェイは、日本海の波打ち際を車で走れる全国唯一のビーチとして有名で、七尾線の旅のハイライトです。また、宝達志水町の宝達山は、能登最高峰ながら初心者にも歩きやすいハイキングコースが整備されており、山頂の展望台からは能登半島の全景を見渡せます。
七尾線の後編では、羽咋から先の能登半島をさらに北上し、七尾・和倉温泉方面への旅をご紹介する予定です。前編の金沢〜羽咋区間だけでも十分に見どころが多い七尾線。ぜひローカル線の鉄道旅で、能登路の入口を訪ねてみてください。車窓の風景とともに流れる穏やかな時間が、きっと心に残る旅の思い出になるでしょう。
写真クレジット:
JR七尾線415系電車 — Kzaral(Wikimedia Commons / CC BY 2.0)
千里浜なぎさドライブウェイ — SONIC BLOOMING(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)









