射水の放生津八幡宮祭り — ユネスコ無形文化遺産の曳山巡行と築山行事・新湊の秋祭り
富山県射水市の放生津八幡宮は、奈良時代に創建されたと伝わる古社で、越中国の総鎮守として長い歴史を持ちます。毎年10月に行われる放生津八幡宮祭りは、豪華絢爛な曳山(ひきやま)巡行と、全国的にも珍しい築山行事が見どころです。ユネスコ無形文化遺産にも登録された曳山は、新湊の人々が守り継いできた誇りの象徴であり、富山を代表する秋祭りのひとつです。

目次
放生津八幡宮の歴史 — 越中国ゆかりの古社
放生津八幡宮の創建は天平18年(746年)と伝えられ、越中国守として赴任した大伴家持が宇佐八幡宮の分霊を勧請したのが始まりとされています。「放生津」の名は、仏教の放生会(ほうじょうえ)に由来し、捕らえた魚や鳥を放って殺生を戒める儀式が行われていたことにちなみます。中世には越中国の守護所が放生津に置かれ、政治・軍事の要衝として栄えました。
戦国時代には上杉謙信が越中に進出した際、放生津城が拠点のひとつとなり、八幡宮も武将たちの崇敬を集めました。江戸時代に入ると加賀藩の庇護のもと社殿が整備され、祭礼も盛大に行われるようになります。放生津は北前船の寄港地としても栄え、商人たちの経済力が祭りの華やかさを支えました。
現在の射水市新湊地区は、かつての放生津の歴史を色濃く残す港町です。新湊内川の水辺の風景とともに、放生津八幡宮は地域の精神的な中心として人々の暮らしに根ざしています。
放生津八幡宮祭りの曳山巡行 — ユネスコ無形文化遺産の華

放生津八幡宮祭りのハイライトは、毎年10月1日・2日に行われる曳山巡行です。13基の曳山が新湊の町を練り歩く姿は圧巻で、各町内が所有する曳山はそれぞれ異なる意匠を持ち、豪華な彫刻や金箔装飾で飾られています。最も高いものは約8メートルにもおよび、花山(はなやま)と呼ばれる華やかな飾り付けが施されます。
曳山の歴史は江戸時代中期にまで遡り、加賀藩主前田家から拝領した御所車が起源とされています。高岡御車山祭と並ぶ富山県を代表する曳山祭りであり、2016年にはユネスコ無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」の構成資産のひとつとして登録されました。夜には曳山に提灯が灯され、「提灯山」として幻想的な姿に変わります。
曳山巡行のルートは放生津八幡宮を起点に新湊の旧市街地を巡るもので、狭い路地を大きな曳山が通り抜ける場面は手に汗握る迫力です。各町内の若衆が威勢よく掛け声をかけながら曳山を曳く姿は、祭りの熱気を肌で感じることができます。

放生津八幡宮の築山行事 — 国指定重要無形民俗文化財
放生津八幡宮祭りのもうひとつの見どころが、国指定重要無形民俗文化財に指定されている「築山行事(つきやまぎょうじ)」です。築山とは、境内に設けられた小高い土壇の上に神像や人形を配置し、神話や歴史の場面を立体的に表現するもので、全国的にも極めて珍しい祭礼行事として知られています。
築山の中心に据えられるのは「御座(ござ)」と呼ばれる神の座で、その周囲に武者人形や動物の像などが配置されます。毎年異なるテーマで飾り付けが行われ、その年の世相や願いが込められています。この行事の起源は室町時代にまで遡るとされ、かつて全国各地で行われていた築山行事の姿を今に伝える貴重な文化遺産です。
築山行事は9月末から10月初旬にかけて放生津八幡宮の境内で公開され、誰でも自由に見学することができます。曳山巡行の華やかさとは対照的な、静謐で神秘的な雰囲気は、祭りのもうひとつの魅力として訪れる人の心に深い印象を残します。
放生津八幡宮祭りと新湊の祭り文化

新湊は「祭りの町」として知られ、放生津八幡宮祭り以外にも年間を通じてさまざまな祭礼が行われています。春には新湊曳山まつり(4月)、夏には新湊カニカニまつりや新湊まつりなど、港町ならではの賑わいを見せます。これらの祭りは、北前船交易で栄えた新湊の経済力と、漁業で培われた団結力が融合して生まれた文化です。
放生津八幡宮祭りの準備は、実は一年を通じて行われています。各町内では曳山の修繕や飾り付けの準備が進められ、囃子の練習も夏から本格化します。祭り当日には町内の老若男女が総出で参加し、世代を超えた絆が確認される場でもあります。少子高齢化が進む中、祭りを通じた地域コミュニティの維持は重要な課題であり、新湊では子どもたちへの伝統の継承に力を入れています。
新湊内川の「日本のベニス」と称される水辺の風景を楽しみながら、放生津八幡宮まで散策するのもおすすめのルートです。祭り期間中は内川沿いの町家にも提灯が灯り、水面に映る灯りが美しい光景を演出します。

放生津八幡宮の御朱印・御利益・参拝情報
放生津八幡宮の御祭神は応神天皇(八幡神)で、厄除け・開運・武運長久の御利益があるとされています。御朱印は社務所で授与されており、祭り期間中には限定の御朱印が登場することもあります。境内には拝殿・本殿のほか、末社や神馬像なども祀られ、歴史の深さを感じさせる佇まいです。
お守りは厄除守や交通安全守のほか、新湊の漁師たちに信仰される海上安全守も人気です。境内の手水舎で清めた後、拝殿で参拝するのが正式な参拝作法です。静かな境内は普段は穏やかな雰囲気で、散策にも適しています。
パワースポットとしても知られる放生津八幡宮は、越中の歴史を肌で感じられる貴重な場所です。高岡の国宝瑞龍寺や高岡御車山祭とあわせて、富山県西部の歴史・文化めぐりのコースに組み込むのがおすすめです。
放生津八幡宮祭りへのアクセス・駐車場・周辺の見どころ
放生津八幡宮へのアクセスは、万葉線の中新湊駅から徒歩約10分です。JR・あいの風とやま鉄道の高岡駅から万葉線に乗り換えるルートが一般的で、所要時間は約40分です。車の場合は北陸自動車道小杉ICから約20分で、祭り期間中は臨時駐車場が設けられます。
祭りの開催日は毎年10月1日・2日で、1日目が宵祭り、2日目が本祭りです。曳山巡行は両日とも行われますが、最も見応えのある提灯山は1日目の夜がメインです。見物のベストスポットは放生津八幡宮前の交差点付近で、曳山が方向転換する迫力ある場面を間近で見ることができます。
周辺の見どころとしては、新湊内川の水辺散策や海王丸パーク、新湊大橋の展望などがあります。射水市は白エビやズワイガニなど海の幸にも恵まれており、新湊きっときと市場での海鮮グルメもお楽しみいただけます。祭りと観光を組み合わせた1泊2日の旅は、富山の魅力を存分に味わえるプランです。
写真出典:Wikimedia Commons
写真クレジット:
射水市の放生津八幡宮祭りの豪華な曳山巡行 — 放生津八幡宮社務所(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)
射水市の射水神社拝殿と境内の風景 — Wikimedia Commons(Wikimedia Commons / CC BY-SA)
射水市新湊の街並み — Wikimedia Commons(Wikimedia Commons / CC BY-SA)
放生津八幡宮がある射水市新湊の町並み — Wikimedia Commons(Wikimedia Commons / CC BY-SA)
放生津八幡宮祭りの曳山 — Wikimedia Commons(Wikimedia Commons / CC BY-SA)








