ローカル線の旅⑤:IRいしかわ鉄道 — 金沢から加賀温泉郷へ、旧北陸本線を走る第三セクターの旅

北陸新幹線の延伸とともに誕生した第三セクター鉄道「IRいしかわ鉄道」。金沢駅から加賀温泉郷の玄関口を経て大聖寺駅まで、かつてのJR北陸本線の石川県区間を走るこのローカル線は、通勤・通学路線でありながら、車窓から眺める白山連峰や加賀平野の風景が美しい鉄道旅の路線でもあります。この記事では、IRいしかわ鉄道の沿線の見どころやモデルコース、乗り換え情報を詳しくご紹介します。

IRいしかわ鉄道の車両と加賀平野の車窓風景
IRいしかわ鉄道521系電車(Photo: Toshinori baba / CC BY-SA 4.0)

IRいしかわ鉄道の概要と歴史 — 旧北陸本線の第三セクター化

IRいしかわ鉄道は、2015年3月の北陸新幹線金沢延伸に伴い、JR西日本から経営分離された北陸本線の石川県区間(金沢〜倶利伽羅)を引き継いで開業した第三セクター鉄道です。「IR」は「Ishikawa Railway」の略で、石川県と沿線自治体が出資して設立されました。

さらに2024年3月の北陸新幹線敦賀延伸に伴い、金沢〜大聖寺間へと路線が大幅に延伸されました。これにより、金沢から加賀温泉郷エリアまで一本のローカル線でつながり、鉄道旅の利便性が格段に向上しています。現在の営業区間は金沢駅〜大聖寺駅の約80kmで、石川県内の主要都市を結ぶ幹線鉄道として、1日あたり多くの列車が運行されています。

IRいしかわ鉄道の金沢駅 — 鼓門・もてなしドームから始まる鉄道旅

IRいしかわ鉄道の起点は、北陸最大のターミナル・金沢駅です。東口に広がる「鼓門(つづみもん)」と「もてなしドーム」は金沢のシンボルとして知られ、到着した瞬間から旅の期待が高まります。北陸新幹線やJR七尾線、北陸鉄道バスなど多くの交通機関が集まるハブ駅であり、IRいしかわ鉄道の列車もここから発着します。

金沢駅では在来線ホームからIRいしかわ鉄道の列車に乗車します。新幹線からの乗り換えもスムーズで、改札を出ずにそのまま在来線ホームへ移動できます。加賀方面への鉄道旅は、この金沢駅から始まります。

IRいしかわ鉄道・松任駅と白山市エリアの見どころ

金沢駅を出発して約10分、最初の主要駅が松任(まっとう)駅です。白山市の中心部に位置し、加賀の俳人・千代女(ちよじょ)ゆかりの地として知られています。駅周辺には「千代女の里俳句館」があり、「朝顔に つるべとられて もらい水」の句で有名な千代女の世界に触れることができます。

松任駅から車で約15分の松任海浜公園は、日本海に面した広大な公園です。夏には海水浴場としても賑わい、晴れた日には白山連峰を背景にした美しい海岸線の車窓風景が楽しめます。このあたりでは、IRいしかわ鉄道の車窓から田園地帯と白山の山並みが広がる開放的な景色を堪能できます。

IRいしかわ鉄道・小松駅と小松市の観光スポット

金沢駅から約30分で到着する小松市の玄関口・小松駅は、IRいしかわ鉄道の主要駅のひとつです。北陸新幹線の停車駅でもあり、ここで新幹線とIRいしかわ鉄道を乗り換える旅行者も多くいます。

小松駅周辺には見どころが集まっています。駅直結の「こまつ曳山交流館みよっさ」では、小松市の伝統行事「お旅まつり」で曳き回される豪華な曳山を間近に見学できます。また、小松空港に隣接する「石川県立航空プラザ」は、実物の航空機やフライトシミュレーターが体験できる航空博物館で、家族連れに人気のスポットです。

小松駅からバスでアクセスできる安宅関跡は、歌舞伎「勧進帳」の舞台として知られる歴史的な名所です。源義経と弁慶の伝説が残るこの地は、日本海を望む松林の中に佇み、歴史ファンならぜひ訪れたいスポットです。さらに、小松市の山間部には神秘的な苔の庭園が広がる苔の里もあり、自然と歴史が融合した小松ならではの鉄道旅が楽しめます。

IRいしかわ鉄道・加賀温泉駅 — 加賀温泉郷への玄関口

金沢駅から約45分、IRいしかわ鉄道で加賀温泉駅に到着します。ここは加賀温泉郷(山代温泉・山中温泉・片山津温泉)への玄関口であり、北陸を代表する温泉エリアへのアクセス拠点です。北陸新幹線の停車駅でもあるため、首都圏からの直接アクセスも便利になりました。

加賀温泉郷・山中温泉の鶴仙渓とあやとり橋
山中温泉・鶴仙渓のあやとり橋(Photo: 藤谷良秀 / CC BY-SA 4.0)

加賀温泉駅からは加賀市の周遊バス「キャンバス」が運行されており、山代温泉・山中温泉・片山津温泉の各温泉地を効率よくめぐることができます。加賀温泉郷のアートめぐりでは、魯山人寓居跡いろは草庵や九谷焼窯跡展示館など、温泉街に点在するアートスポットを楽しむことができます。

山代温泉は1300年の歴史を誇る名湯で、総湯(共同浴場)や古総湯でのレトロな湯浴みが人気です。山中温泉は松尾芭蕉が「扇谷と山中にし、よき温泉(いでゆ)」と讃えた渓流沿いの温泉地で、鶴仙渓の遊歩道散策が楽しめます。片山津温泉は柴山潟のほとりに広がる温泉地で、湖面に映る白山連峰の絶景が魅力です。

IRいしかわ鉄道の終点・大聖寺駅と加賀の城下町

金沢駅から約55分、IRいしかわ鉄道の終点が大聖寺駅です。大聖寺は加賀藩の支藩・大聖寺藩の城下町として栄えた歴史ある町で、九谷焼発祥の地としても知られています。

大聖寺駅周辺では、江沼神社や長流亭(重要文化財)など、藩政時代の面影を残す史跡が点在しています。また、大聖寺は九谷焼の里への拠点でもあり、九谷焼美術館や窯元をめぐる陶芸散歩が楽しめます。色鮮やかな九谷五彩の器は、旅の土産としても人気です。

大聖寺駅からバスやタクシーでアクセスできる橋立の北前船集落は、かつて日本海交易で栄えた船主たちの豪邸が残る重要伝統的建造物群保存地区です。笏谷石(しゃくだにいし)の石垣と板塀が続く集落の町並みは、往時の繁栄を静かに物語っています。IRいしかわ鉄道の終点から足を延ばして、ぜひ訪れたいスポットです。

IRいしかわ鉄道で行く加賀温泉郷モデルコース

IRいしかわ鉄道を利用した加賀温泉郷めぐりの日帰りモデルコースをご紹介します。鉄道旅ならではの気軽さで、加賀の名所を効率よくめぐることができます。

【モデルコース】金沢発・加賀温泉郷めぐり(日帰り)

金沢駅 →(IRいしかわ鉄道・約40分)→ 加賀温泉駅 →(キャンバスまたは路線バス)→ 山代温泉で総湯・古総湯を体験 → 山中温泉で鶴仙渓散策とこおろぎ橋 →(バスで加賀温泉駅へ戻り、IRいしかわ鉄道で約10分)→ 大聖寺駅 → 九谷焼の里で窯元めぐり → 橋立の北前船集落を散策 →(IRいしかわ鉄道で約55分)→ 金沢駅

時間に余裕があれば、小松駅で途中下車して曳山交流館みよっさや安宅関跡を訪れるのもおすすめです。IRいしかわ鉄道は本数が多いため、途中下車の旅がしやすいのも魅力です。

IRいしかわ鉄道とハピラインふくいの乗り換え — 福井方面への接続

IRいしかわ鉄道の終点・大聖寺駅では、福井県の第三セクター鉄道「ハピラインふくい」に乗り換えることができます。ハピラインふくいは、同じく北陸新幹線の延伸に伴ってJR北陸本線から経営分離された路線で、大聖寺駅〜敦賀駅間を結んでいます。

大聖寺駅での乗り換えはスムーズで、同じホームまたは隣接ホームでの接続となります。石川県から福井県へ、2つの第三セクター鉄道を乗り継いで旅する「並行在来線の旅」は、北陸新幹線開業後に生まれた新しいローカル線の楽しみ方です。芦原温泉や福井、越前たけふ方面へも鉄道でつながっており、北陸周遊の旅がさらに広がります。

IRいしかわ鉄道の運行情報とアクセス

IRいしかわ鉄道は、旧北陸本線の幹線区間を受け継いでいるため、ローカル線としては運行本数が多いのが特徴です。日中でも1時間に1〜2本程度の列車が運行されており、鉄道旅の計画が立てやすくなっています。

主な区間の所要時間(目安):

  • 金沢駅〜松任駅:約10分
  • 金沢駅〜小松駅:約30分
  • 金沢駅〜加賀温泉駅:約45分
  • 金沢駅〜大聖寺駅:約55分

運賃はICカード(ICOCA)にも対応しており、切符の購入なしでスムーズに乗車できます。また、北陸新幹線との乗り継ぎ割引きっぷなど、お得なきっぷも販売されていますので、旅行前に公式サイトで最新情報を確認することをおすすめします。

IRいしかわ鉄道の車窓風景と鉄道旅の魅力

IRいしかわ鉄道の車窓からは、加賀平野の田園風景と白山連峰の雄大な山並みが楽しめます。特に金沢〜松任間では平野部を走るため視界が開け、晴れた日には残雪を頂く白山が美しく見えます。秋には黄金色の稲穂が広がる田園風景、冬には雪化粧した北陸の景色と、四季折々の車窓が旅を彩ります。

IRいしかわ鉄道は、地元の通勤・通学路線としての役割と、観光客を加賀温泉郷へ運ぶ観光路線としての顔を併せ持っています。朝夕は学生やビジネスパーソンで賑わい、日中は旅行者がゆったりとローカル線の旅を楽しむ——そんな日常と非日常が交差する鉄道です。旧北陸本線の歴史を受け継ぎながら、新しい時代の地域鉄道として走り続けるIRいしかわ鉄道で、金沢から加賀温泉郷への鉄道旅に出かけてみてはいかがでしょうか。

写真クレジット:
IRいしかわ鉄道521系電車 — Toshinori baba(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)
山中温泉あやとり橋 — 藤谷良秀(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)

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