旧北陸線トンネル群 — 明治の赤レンガ鉄道遺産を歩く敦賀〜今庄ハイキング

福井県敦賀市から南越前町今庄にかけて、明治時代に開通した旧北陸本線のトンネル群が残されています。全長約20kmの区間に大小13のトンネルが連なり、赤レンガ造りの坑門や石積みの擁壁は、日本の近代化遺産として土木学会の選奨土木遺産に認定されています。現在は遊歩道やサイクリングロードとして整備され、明治の鉄道遺産を巡るハイキングコースとして人気を集めています。

旧北陸線トンネル群の樫曲トンネル・土木学会選奨土木遺産
旧北陸線トンネル群・樫曲トンネルの土木遺産プレート(Photo: TR15336300101 / CC BY-SA 4.0)

旧北陸線トンネル群の歴史 — 明治の鉄道建設と難工事

旧北陸本線の敦賀〜今庄間は、1896年(明治29年)に開通しました。この区間は敦賀平野から今庄盆地へ至る山越え区間で、標高差約200mの急峻な地形を克服するために多数のトンネルが掘られました。当時の技術では最先端の工事であり、人力による掘削が中心だった時代に、わずか数年でこれだけのトンネル群を完成させた技術力は驚異的です。

特に全長1,170mの山中トンネルは当時の日本で最長クラスのトンネルで、工事中には湧水や落盤に悩まされました。建設にはイギリス人技師の指導のもと、フランス式の工法が採用されました。赤レンガを積み上げたアーチ構造は、130年以上を経た今も健在で、明治期の土木技術の高さを物語っています。

この路線は1962年(昭和37年)に北陸トンネル(全長13,870m)の開通により廃線となりました。その後、トンネル群は長年にわたり放置されていましたが、鉄道遺産としての価値が見直され、2014年に土木学会選奨土木遺産に認定されました。

旧北陸線トンネル群ハイキングコースの見どころ

旧北陸線トンネル群のハイキングコースは、敦賀市葉原(はばら)から南越前町今庄までの約12kmが主要ルートです。レンガ造りのトンネルを次々とくぐりながら、明治時代にタイムスリップしたかのような体験ができます。

主なトンネルの見どころを紹介します。樫曲(かしまがり)トンネルは全長170mで、歩道として整備されたトンネルの代表格です。赤レンガのアーチが美しく、内部には当時のレンガの積み方や水抜き穴を観察できます。曲谷(まがりだに)トンネルは坑門のデザインが特徴的で、切石と赤レンガの組み合わせが目を引きます。

山中トンネルは最長のトンネルで、内部は真っ暗になるため懐中電灯が必携です。トンネル内には明治時代の退避所(ニッチ)が残されており、蒸気機関車時代の名残を感じることができます。また、トンネルとトンネルの間の明かり区間では、緑豊かな山中の風景が広がり、春の新緑や秋の紅葉が美しいルートです。

旧北陸線・樫曲トンネルの内部・現在は歩道として整備
歩道として整備された樫曲トンネルの内部(Photo: TR15336300101 / CC BY-SA 4.0)

旧北陸線トンネル群ハイキングの所要時間とコース案内

全区間(葉原〜今庄)を歩く場合の所要時間は約4〜5時間です。健脚向けの本格的なハイキングコースですが、アップダウンは緩やかな旧鉄道の勾配(最大25‰)を利用しているため、比較的歩きやすいルートです。

気軽に楽しみたい方は、敦賀側の葉原入口から樫曲トンネルまでの往復コース(約2時間)がおすすめです。このエリアはトンネルが集中しており、短時間で複数のトンネルを巡ることができます。自転車でのサイクリングも可能で、今庄サイクリングターミナルでレンタサイクルを借りることもできます。

注意点として、トンネル内は暗く足元が不安定な箇所もあるため、懐中電灯(ヘッドランプ推奨)と歩きやすい靴は必須です。また、トンネル内は夏でも涼しい(15℃前後)ので、薄手の上着を持参すると良いでしょう。冬期は積雪のためアクセスが困難になることがあります。

旧北陸線の鉄道遺産としての価値 — 近代化遺産の保存

旧北陸線トンネル群は、日本の近代化を支えた鉄道遺産として極めて高い歴史的価値を持っています。明治期の赤レンガトンネルがこれほどまとまった形で残されている例は、全国的にも珍しいものです。2014年に土木学会選奨土木遺産に認定されたほか、南越前町の文化財としても保護されています。

トンネル群に使われている赤レンガは、当時の大阪や京都の煉瓦工場で製造されたもので、「イギリス積み」と呼ばれる積み方で組まれています。坑門のデザインにはそれぞれ微妙な違いがあり、装飾的な帯石やキーストーン(要石)など、明治の技師たちの美意識も感じられます。

近年は「鉄道遺産ウォーク」などのイベントも開催され、鉄道ファンだけでなく歴史好きやハイキング愛好者にも注目されています。廃線跡を活用した観光振興のモデルケースとしても全国から視察が訪れています。

旧北陸線トンネル群へのアクセスと駐車場

敦賀側の入口(葉原)へは、北陸自動車道「敦賀IC」から車で約15分です。葉原地区に駐車スペースがあります。公共交通機関を利用する場合は、JR北陸本線「敦賀駅」からコミュニティバスまたはタクシーで約20分です。

今庄側の入口へは、JR北陸本線「今庄駅」から徒歩約15分で、今庄宿の町並みを抜けてアクセスできます。今庄サイクリングターミナルが拠点施設として利用でき、レンタサイクルの貸し出しも行っています。

片道コースを歩く場合は、今庄駅〜敦賀駅間のJR北陸本線を利用して片道のみ電車移動するのが効率的です。ただし本数が限られるため、事前に時刻表を確認しておきましょう。

旧北陸線トンネル群の周辺観光 — 敦賀と今庄の見どころ

ハイキングの前後には、敦賀と今庄の観光も楽しめます。敦賀には北陸の総鎮守・気比神宮があり、日本三大木造鳥居のひとつに数えられる大鳥居は必見です。港町の歴史を伝える赤レンガ倉庫や、敦賀ムゼウムでは、ユダヤ難民を救った「人道の港」の物語に触れることができます。

今庄宿は、かつて北陸道の宿場町として栄えた町で、古い町並みが残されています。今庄そばは越前そばの本場のひとつで、ハイキング後の食事にぴったりです。また、今庄365スキー場は冬期のレジャースポットとして知られ、旧北陸線の歴史と合わせて四季を通じて楽しめるエリアです。

鉄道遺産に興味がある方は、敦賀駅前の「敦賀鉄道資料館」にも立ち寄ってみてください。旧北陸線の歴史資料や、かつて敦賀港からウラジオストクへ向かう国際列車の時代の貴重な資料が展示されています。

写真クレジット:
旧北陸線トンネル群・樫曲トンネルの土木遺産プレート — TR15336300101(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)
樫曲トンネルの内部 — TR15336300101(Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0)

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