敦賀港と鉄道の歴史 — 欧亜国際連絡列車の玄関口・杉原千畝と命のビザ・北陸新幹線開業で蘇る港町

敦賀駅の駅舎外観
敦賀駅(Photo: 有島あける / CC0)

福井県敦賀市は、日本海側有数の港湾都市として古くから栄えてきました。特に明治時代から昭和初期にかけて、敦賀港はウラジオストクと結ぶ国際航路の拠点となり、ヨーロッパと日本を結ぶ「欧亜国際連絡列車」の日本側玄関口として大いに賑わいました。第二次世界大戦中には、杉原千畝が発給した「命のビザ」を手にしたユダヤ難民が敦賀港に上陸し、多くの命が救われた歴史的な舞台でもあります。2024年3月には北陸新幹線が敦賀まで延伸開業し、新たな時代を迎えた敦賀の鉄道と港の歴史をご紹介します。

敦賀港の歴史 — 古代から近代への港町の発展

敦賀港の歴史は古く、奈良時代には渤海国との交易港として栄えました。古代の敦賀は「角鹿(つぬが)」と呼ばれ、朝鮮半島や中国大陸との交易の窓口でした。中世には北前船の寄港地として発展し、江戸時代には小浜藩の外港として重要な役割を果たしました。明治時代に入ると、敦賀港は近代的な港湾として整備され、1882年(明治15年)には敦賀と長浜を結ぶ鉄道が開通しました。これは日本で3番目の鉄道でした。

1912年(明治45年)、敦賀港とウラジオストク港を結ぶ定期航路が開設されました。これにより、シベリア鉄道を経由してヨーロッパへと至る「欧亜国際連絡ルート」が確立されました。敦賀駅から新橋駅(後に東京駅)へ、そして船でウラジオストクへ、さらにシベリア鉄道でモスクワ・パリへと至るこのルートは、当時世界最速の日欧連絡ルートとして利用されました。多くの外交官・実業家・文化人が敦賀港を経由してヨーロッパへ旅立ち、逆にヨーロッパから日本へと訪れました。

敦賀と杉原千畝 — 命のビザとユダヤ難民救出の歴史

敦賀の歴史で特筆すべきは、第二次世界大戦中のユダヤ難民救出の物語です。1940年、リトアニアの日本領事館に赴任していた外交官・杉原千畝は、ナチスドイツの迫害から逃れようとする多くのユダヤ人に対し、日本政府の訓令に反して日本通過ビザ(命のビザ)を発給しました。このビザを手にした約6,000人のユダヤ難民は、シベリア鉄道を経由してウラジオストクへ、そして敦賀港へと渡りました。

1940年から1941年にかけて、敦賀港には次々とユダヤ難民を乗せた船が到着しました。敦賀市民は、疲れ果てた難民たちを温かく迎え入れ、食事や入浴の手配などを支援しました。難民たちは敦賀から神戸や横浜へと向かい、さらにアメリカやパレスチナ(現イスラエル)へと旅立ちました。この歴史を伝えるため、敦賀市には人道の港 敦賀ムゼウムが開設されており、杉原千畝の功績とユダヤ難民救出の歴史を展示しています。

敦賀駅の北陸新幹線ホーム
敦賀駅の北陸新幹線ホーム(Photo: ブルーノ・プラス / CC BY 4.0)

敦賀の鉄道史 — 北陸本線から北陸新幹線へ

敦賀は福井県の鉄道交通の要衝として発展してきました。1882年に敦賀~長浜間の鉄道が開通して以来、北陸本線の重要な駅として機能してきました。敦賀駅は小浜線の起点でもあり、若狭方面への玄関口でもあります。かつては敦賀港と駅を結ぶ港湾鉄道も運行されており、港と鉄道が一体となった物流拠点でした。

2024年3月16日、北陸新幹線が金沢から敦賀まで延伸開業しました。これにより、東京から敦賀まで最速約3時間10分で結ばれ、福井県の交通アクセスが大きく向上しました。敦賀駅は北陸新幹線の終着駅(将来的には京都・大阪方面への延伸が計画されています)として、新たな時代を迎えています。駅舎も新幹線開業に合わせてリニューアルされ、近代的な駅施設となりました。

敦賀駅周辺には、鉄道と港の歴史を伝える施設が点在しています。旧北陸線トンネル群は、明治時代に建設された赤レンガのトンネルで、鉄道遺産として保存されています。また、敦賀鉄道資料館(敦賀駅構内)では、敦賀の鉄道史や欧亜国際連絡列車の歴史を学ぶことができます。

敦賀港の現在 — 物流拠点と観光の拠点

現在の敦賀港は、日本海側有数の国際貿易港として機能しています。コンテナ船やフェリーが発着し、韓国や中国との貿易の拠点となっています。また、LNG(液化天然ガス)の輸入基地も整備され、エネルギー供給の拠点としても重要な役割を担っています。港周辺には敦賀赤レンガ倉庫が保存・活用されており、レストランやジオラマ館として観光客に人気のスポットとなっています。

敦賀港周辺には他にも、金ヶ崎城跡気比神宮など歴史的なスポットが点在しています。また、日本海さかな街では新鮮な海鮮グルメが楽しめ、敦賀観光の拠点として賑わっています。北陸新幹線の開業により、敦賀は新たな観光の玄関口としても注目を集めています。

敦賀へのアクセスと周辺観光

敦賀へは、2024年3月開業の北陸新幹線で東京から約3時間10分、金沢から約45分です。大阪方面からは特急サンダーバードで約1時間20分です。車の場合は北陸自動車道「敦賀IC」が最寄りです。敦賀を拠点に、氣比の松原立石岬灯台など敦賀半島の観光、三方五湖小浜など若狭方面への観光が楽しめます。

敦賀の歴史を学ぶには、人道の港 敦賀ムゼウム、敦賀鉄道資料館、敦賀赤レンガ倉庫を巡る歴史散策がおすすめです。港と鉄道が紡いできた敦賀の歴史に触れ、国際都市としての敦賀の魅力を発見してみてはいかがでしょうか。

写真クレジット:
敦賀駅 — 有島あける(Wikimedia Commons / CC0)
敦賀駅の北陸新幹線ホーム — ブルーノ・プラス(Wikimedia Commons / CC BY 4.0)

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